「炊飯器」 作 岩川 光一朗 ------------------------------ <CAST> 女・・・ ------------------------------ 幕が上がる。 女が男に連れられて上手から舞台に入ってくる。 女    おじゃましまーす。 うっとイヤな顔。部屋の中が汚い。ぐっとこらえて。 女    ごめんなさい夜遅くに、無理言って。なんかあのままさよならじゃ寂しいなーなんて思って・・。あ、でもちょっとしたら帰りますから。 男、女を引き止める。でも社交辞令かな? 女    え、でも・・そんな・・・ 男、「何か飲み物を買ってくるよ」と提案 女    そんな悪いですよ。じゃ、ビールで!こうじさんは?ス・ク・リュー・ドライバー?わ、おいしそう。それわたしも。かえます。すいません。お願いしまーす。 男出ていく。 女    行ってらっしゃーい。 女部屋を見回して。 女    あの人顔はきれいだけど部屋きたなー。ま、わたしがそばに居れば事が済むって事よねー。よし、ここでわたしの株を上げておかなきゃ。「え、君あの短時間でこんなにきれいに掃除してくれたの?」「あ、そんな。出過ぎた真似してすいません。ただこうじさんの役に立ちたかっただけなの。」「すごいよ。すばらしいよ。ぼくのそばにずっと居てくれ。」ってな具合で。さっ手始めに。 女服をつまんで。 女    うわっ。なにこれ・・・キノコは山に生えてる物です。わ!!買い物袋から何よこれ!!!! 女買い物袋を手に腰が引けている。 女    ちょっとここで休んでてね。 と買い物袋を端によける。 女    何なのよこれ。ちょっとーーー。・・・そうよね、掃除をするには今日は分が悪すぎるわ。そうよ、すぐ帰って来ちゃうもの。よし、ここは私の一番おいしい所を見せつけなきゃね。・・・料理。そう料理よ!!「おおこれはうまい!」「気に入ってもらえましたか?」「ああ、最高だよ。」「でもあなたのためにもっとおいしい物を用意してあるの・・。」「なんだいそれは?」「それは。」「それは?」「それは。」「それは?」「それは・・・わ・た・し。」「きゃーこうじさんやめてーっ」なんてことやってる場合じゃない。まずは、米米米。炊飯器は・・ と服の山を蹴散らす。 女    ・・・宝探しゲーム。子供の頃やったな。うわ、何じゃこりゃ。・・・見なかったことに・・・。 と元に戻す。 女    さすがに大人になったら宝探しゲームもはずれ付きね。炊飯ジャー炊飯ジャー炊飯ジャー と何か思いついて。 女    炊飯ジャーはどこジャー。くっくっくっ。つまんねー。 女、炊飯ジャーを見つける。 女    あ、こんなところに炊飯ジャーが、こんなに神々しく見えたのは初めてジャー。2回目はダメね。自分さえ受けない。ぽち。 とジャーを開ける。 女    あーーっ。 とジャーを閉める。ジャーから離れて。 女    何なのあれ?赤・青・黄色。幻であって欲しい・・・。 と、再び炊飯ジャーに挑む女。 女    新聞紙新聞紙。 と新聞紙を見つけ。新聞紙をひく。と、足で炊飯器を開け。炊飯釜をひっくり返し。 女    わーぽこぽこぽこ。ぽこぽこぽこ。まだ残ってる。ぽこぽこぽこ。・・・ふくろふくろ。 と、一度新聞紙を閉じて袋を探す。袋を手にして見ると新聞紙が開いてる。 女    わっ。 と新聞紙を閉じ。袋に入れゴミ箱に投げる。 女    えいっ。 女、炊飯釜を、流しに持っていき水をはる。 S.E.「ガチャッ」男が帰ってくる。 女    お帰りなさーい。早いですね。そんなことありますよ。うちの父なんか100メートル離れたコンビニにビール買いに行くのに3時間かかるんですよ。いや。作ってないですよ。・・・あ、炊飯器?大したこと無いですよ。私もよくやるんです。赤・青・黄色・緑。結構綺麗ですよね。え?見たこと無いんですか?一度見てみるといいですよ。あっさっきの見ます?・・・えっ!!・・・冗談ですよね。ふーっ。良かった。こうじさん帰ってくるの早かったからご飯も炊けなかったんですよ。え、残念だなーせっかく私の腕を見せようと思ったのに・・・。え!買って来ちゃったんですか?じゃ今度私の腕見せますね。え!本当ですか?何にしようかなぁー・・・え、それより?そうですね。それでは・・・カンパーイ。 幕