「地球を守れ!!」 作 岩川 光一朗 〈登場人物〉 隊長・・・・男(30歳) A・・・男(22歳。新人隊員) B・・・女(29歳) C・・・女(19歳) 犬のポチ・・メス 〈場所〉 私立 地球防衛軍「まもるくん」の事務所 音楽。幕が開く。 隊長 あなたは笑ってくれますか? B あなたは怒ってくれますか? C あなたはしかってくれますか? A・B・C あなたは、悲しんでくれますか? 隊長 あなたは・・・ A・B・C あなたは。 A 僕の命がつきる時、あなたは。 全員 あなたは何か、何かしてくれますか? 明転。そこは、地球防衛軍の事務所。壁には、「死んで花実が咲くものか」「飲んでも死ぬな、死ぬなら飲むな」「つっても死ぬな、死ぬならつるな」「命を大切に」など、いろいろ張ってある。隊長、B、C、犬のポチが落ち着きなくうろうろしている。隊長、電話のコードを指にくるくる巻いて、巻いてはほどき巻いてはほどきしている。B、髪の毛をいじって変な髪型にしては直し、いじっては直ししている。C、ゴミ箱に向かってティッシュを投げ入れる。が、入らない。ポチ取ってきて手渡す。また投げるが入らない。以後繰り返し。入ったら、ポチがゴミ箱を倒し、またティッシュを手渡す。 隊長 今日だっけか? B 何が? 隊長 何がって、新入り。 C そうでしょ。 隊長 そうだよなー。そーだそーだ。 ポチ 今日何回目だ?この質問。 B 若い? C かっこいい? 隊長 さあ? BC さあって。 隊長 男だっけか? C 違うの? 隊長 そうだよ。 B もーびっくりさせないでよ。(隊長を指さして)男、(自分を指さして)女、(Cを指さして)女ときたら次は男でしょ。 C そーゆー問題なの? B そーじゃない? 隊長 そーだよな。地球には男と女しかいないんだからなー。 ポチ なんだよこいつら意味不明だよ。 隊長 男と女が子供を作って、生まれてくるのは男か女。生命の神秘だな。 C 当たり前じゃないですか?そーゆーことしたらそーなぅてそーなるのよ。きゃ。 ポチ は?何だこいつ。 B (突然)もーみんなどーしちゃったの。落ち着いてよ。 ポチ 何だよ、おまえが落ち着けよ。 隊長 どうした?B。 B 何でもありません隊長。ただ何となく・・ S.E.「ピンポーン。」音楽。 隊長 来たな。戦闘配置につけ!! B・C はっ。 C さあ、ポチ。こっちだ早く。 ポチ、こっちに行く。 ポチ 何だよ。 C おまえはここに残れ。 と、机に結びつける。 ポチ な、何すんだよ。 C 隊長準備オッケイです。 隊長 それでは。 と、隊長以下、B、Cは奥に引っ込む。 ポチ 何だよー。 A(声) こちらでしょうか? とそこに男(A)が現れる。 ポチ こちらですよー。(椅子に座ってふてくされている。) A 誰もいないのかと思いきや、迎え撃つのは犬が一匹。 ポチ 悪かったな。 A あのー、ここの人たちどこにいるんですか? ポチ あっち。(みんながいる方を指差す。) A ごめんね君に聞いても分かんないよね。 ポチ 分かるよ。だからあっちだってば。 A 留守ですかー?(と奥に) 反応無し。 ポチ だからあっちだって!! A おーよちよち。 と頭をなでる。ポチ嬉しそう。 A 五分前行動があだになったな。・・ま、ちょっと待たせてもらおう。いいよね(とポチに)。 ポチ 待てば。 と、一息。 A ねえ君なんて名前? ポチ ポチ。 A パトラッシュかー、いい名前だね。ネロは、元気?あ、教会の前で雪の日に死んだんだっけ。ごめんごめん。 ポチ ポチだってゆーとるやろ。 A あ、ガム食べる? ポチ 食べる食べる。 A あ、いらないの。そっか。せっかくあげようと思ったのに。 ポチ おまえなめてんのか? A あれ今日だよな。 とポケットから紙を取り出して。見る。 A やっぱり今日だ。 と、突然。室内放送が入る。 隊長 あ、あ、あ、え、え、え、あれ、これでいいのか? C いいんじゃないです? B あーー!隊長っ〜!!スイッチ、スイッチぃっ、入ってますぅ。 隊長 え、嘘。どれ、わーほんとーだ。・・・・(声が変わって)おっほん。名前は。 A反応無し。 隊長 名前は? A、自分のことだと気づいて。 A あ、僕ですか? 隊長 そうです。名前は。 A 早田です。早田 慶。です。 隊長 いい名前ですね。 A あ、どうもありがとうございます。 隊長 えーと、面接を始めます。 B・C はじめます。 A は、はい。 隊長 おかけください。 A かけるって・・ここでいいですか? 隊長 よろしい。 A座る。隊長B・C出てくる。 A あの、面接って? 隊長 あ、振り向かない。 B そのままじっと。 C うごくな。 と。C、おもちゃの銃を頭に押しつける。 A て、動いてませんよ。 B 動いたら。 A 動いたら? C 動いたら。 A 動いたら? 隊長 ふふふ。 A ちょっとー。 隊長 うちの事務所に入所希望だな。 A 何ですかこれ面接でしょ?それに何で急に口調変わるんですか? 隊長 違うのか? A そ、そうです。 隊長 合格。 B・C えっちょっと隊長。 A 合格ですか? 隊長 だ、だめか?さいしょっからどうせ合格・・ C隊長の口を押さえて。 C 誕生日。 A は? C 誕生日は? A え、あの、その、昭和52年7月4日。 C 昭和52年・・22歳? A はい。 C 合格!! B ちょっとずるーい。彼女は? A え、なんでそんなこと・・ B 早く答えなさい。 A え、でも、 B いるの?いないの? A え、でも・・ B どっち。 A い、いますよ。 B・C ふごうかーく!! A え、そそんな。(と、振り向く) 隊長 ポチ、いけい。 ポチ 合点承知の助。 ポチAをくすぐる。 A ひゃははははは。こらやめろパトラッシュ。 なぜかスローモーション。A逃げてポチが追う。 A ははは、はははは〜。やーめーろーよー ポチ まて、まてまてー。 と、隊長が 隊長 さ、仕事を始めよう。 B・C・ポチ はーい。 と、B・Cポチ去る。Aぽつり取り残される。 A えーと、・・僕は? 隊長 あ、そっかとりあえず座って見てて。 A はーい。 隊長 おっいい返事だ。じゃあそんな君にちょっと練習していてもらおう。 隊長机の中から、紙を一枚出す。 隊長 はいこれ声出して読んでみて。 A え、何ですこれ? 隊長 ま、かけ声だよ。迫力のある声で読んでくれよ。タッタッタッタッタッガチャ。「我ら秘密結社生かすクン」ってね。 A 毎回やるですか? 隊長 そう。 A ふーん。なんか安っぽい戦隊物みたい。 隊長 なに? A いやべつに。 Bが入ってくる。 B 隊長。今日は5通入ってました。プリントアウトしますか? 隊長 おう頼む。 B Cちゃーん。プリントアウトして持ってきて。 C はーい。 隊長 ちょっとトイレ。 隊長トイレに行く。 B ね、何でここに来たの?景気も回復して大学出だったら引く手あまたでしょ? A それ、それですよ。 B なに? A それ面接で聞いてほしかったな。 B 何で? A 昨日は寝ずに考えたのに・・。それなのに、あの面接ですよ、年は?誕生日は?合格。彼氏は?不合格!! B あーうち慢性的な人手不足だから一応形式的に面接やってるの。 A そーですか? B で、大学を出て引く手あまたで面接の志望動機を寝ずに考えちゃうそんなあなたが、慢性的な人手不足のうちに何できたわけ? A えーと、豊かになった今の時代、今までよりもさらにもとめられるのは、「時代のニーズに答える」ということだと思います。ですから、御社のやっている事業のお手伝いを若輩者ながらさせていただけたらうれしいと思ったしだいであります。 B す・て・き。 音楽。 A へ? B 君さ初めて見たときから思ってたんだけどさ、なんか世の中の男と違うにおいがするって言うか、 A え、ちょっと待ってください。 B それに君すごいきれいな顔してるよね。 A な、なんですかいきなり、てれるな。 B いきなり!ちがうわ。私はあなたを一目見たときからラブラブビームをあなたにおくり続けていたのに・・(とはなからビーム) A ちょ、ちょっとやめてくださいよ。何で鼻からそんなの出るんですか? B こんなに思っているのに、私のこと嫌い? A 嫌いとか好きじゃなくって・・ B じゃ、好き? A だってまだ会って1時間もしてないし。 B もーどっちなのよ、出会いはフィーリングよ。はっきりしなさい、さーどっち。 A そんなこと言ったって、困ります。 とそこに、Cがいつの間にかいる。 B なによ、ビーム、ビーム、ビーム。(と出す。) と追いかけ回す。A逃げてる間にそこにいたCと入れ替わる。 B もー早田くーん。どっちぃ C 先輩。 音楽切れる。 B ・・にする?お茶とコーヒー。 C はい5枚プリントアウトしました。 と、手渡す。 B どうもね、じゃ。 と、プリントを持ってBそそくさと去る。 隊長 わー。 B(声) わー何で開いてるのよー B出てくる。 B もー。 C どーしたんですか? S.E.「トイレを流す音」 B なんでもない。 B去る。隊長出てくる。 C またですかー、 隊長 ぽっ。 C ちゃんと閉めないと、自分だけのトイレじゃないんですからね。 隊長 ・・・ごめんよ。Bちゃーん。 隊長去る。 A なんなんですか? C (声を変えて)ふたりっきりに、なっちゃったね。 音楽。 A ええっ? C、音楽を止める動作をして。 C 冗談よ。 A ですよね。ここの女の人みんなそんなんなのかと思ったじゃないですか。 C 気をつけてね、あの先輩あんなフリフリでちっちゃくってかわいいけど来年三十路の独身だから。もー男と見たらほっておかないの。 A えー、そんな風には見えないけどなー。 C ・・ちょっといいなとか思った? A えーそんな。 C 少しは思ったでしょ? A え、いや。 C 正直になれよ。 A ちょっとは・・ C、Aのズボンのポッケから携帯を抜き取り、 C はいはい。こちら地球防衛軍まもるくん。今あなたの彼が浮気の炎を燃えたぎらしていまーす。至急来られたし。くりかえす・・ A ちょ、ちょっとー A、携帯を取り返して耳に当てると、時報が聞こえる。 A もー何なんですか? C かわいい。ちょっとおちょくっただけよ。 C、机の上にあるラジオを入れる。 ラジオの放送。 「本日行われた国会にて、自殺自由法の成立を掲げるチョーさん党と自殺防止法を掲げる光明党の議員が全面対決の姿勢を崩さず、会は中断・・・」 C 自殺が自由だとか、自殺は禁止だとか、色々言ってるけど、ナンセンスよね。 A あれ、Cさんは、自殺防止のほうの人じゃないんですか? C なーにいってんのよ。 A え、でも、 C ここの所員だから自殺防止だと思っている? A はい。 C 単純ねー A じゃあ・・ C でも自殺自由の人でもないわよ。人間ってそんな簡単なものじゃないの。分かる? A はぁ。 C あんたは? A まあ、どっちかというと。防止法のほうかな? C ふーん。 隊長プリントアウトした紙を手に出てくる。Bもついてくる。 隊長 今日は5件か。 B 今日は多いですね。 A さっきから聞こうと思っていたんですけど、ああいう情報ってどこから来るんですか? C インターネットよ。 A (おおげさに)イ、インターネットォーーッ。 C そんなに珍しい? A いや何となく。 ポチ インターネットのホームページ「あなたの自殺をまもるくん」掲示板には、自殺したい願望の人が集まっています。『「自殺の権利を奪うものから自由になろう。自殺は自由だ!」を合い言葉にあなたの自殺が無事何事もなく行われるように私たちがまもります。』そんなこと言って現場を聞き出し、助けちゃうんだから詐欺ですよね。(客に)どう思います? 隊長・B・C・A ポチ(パトラッシュ)!!うるさい。 C もー何ほえてんの? B おーよちよち。おまえがメスでなかったら結婚してやったのに。 A・B えっ? ポチ いや勘弁してください、姉(あね)さん。 B うれしいって?なーんてかわいいこ。(と抱きしめる) C もームシムシ。ところで早田くん。うちの就職情報はどこで見たの? A え?大学の就職掲示板ですけど。 隊長 あー俺が貼ってきた奴だ。 B なんて書いてあったの。 隊長 僕らと一緒に地球を守ろう。いま地球は自殺であふれています。こんな時代やさかい自殺防止業。 C あんたそんなん見て応募したの? A (元気に)はい。 B すてき。 C 先輩!! B 冗談冗談。 C 何にしてもここにいるってことは変人よね。 A そーですか? 隊長 さーてどれから行くかな。 C これなんか時間的にいいんじゃないんですか? 隊長 あーそうだな。 B どれ(と取る)、・・いいんじゃない。さ、道具用意しよう。 C さ、テンションあげよう。 A あ、僕はどうすればいいんでしょうか? 隊長 そうだそうだ。まず、オーソドックスな仕事の流れを教えなきゃだな。おーいみんな集合。 B・C・ポチ並ぶ。 隊長 打ち合わせ。 みんな打ち合わせの体勢。 隊長 かくかくしかじかほにゃらもがらでらららのら。・・という手順で行きたい。 みんなうなずく。 隊長・B・C ミュージックスタート!! 音楽。 隊長 そこは、四畳一間のさびれたアパート。一人の悲しい青年が今まさに天井からつり下がるわっかに身を預けようとしている。 ポチ。悲しい顔して、出てくる。ロープを手に、中央の机に立つ。 隊長 そこに現れる、心優しい我ら「まもるくん。」 隊長・B・C 死んではいかん。 ポチ なんだよ。 隊長 死んではいけません。あなたの体はあなただけのものではないのです。 ポチ もう決めたんです。 隊長 いいじゃないですか、 ポチ うるさいっっ。 と、台から落ちる。ポチ苦しそうな表情。音楽ボリュームが上がる。表情を十分見せたら音楽下がる。 隊長 行け。Cっ!! C袖に走り、高枝切りばさみをとってくる。出てきて前に向かって一発ばしっと切る。ポチぼとっと落ちる。 音楽上がる。ポチ袖に走りナイフを持ってきて手首に当てる。音楽下がる。 C やめるのよー。生きていれば、あんなことやこんなこと、そんな楽しいことだってあるんだからーっ。 ポチ うるさいっ。 C 私たちは秘密結社。 隊長・B・C 生かすクン。 C イカした奴等だ。 ポチ だからなんだー。 C いいのかなそんな口をきいて。 ポチ うるせー。 C あーいいんだー。あなたが死んだらあなたのあんなことやこんなことそんなことだってバラしちゃうぞー。 ポチ なんだよそれ。 C ほーら、胸に手を当てて考えてごらん。 ポチ ・・・・・やらせるなっ。 C ほーら死ねないだろ。 ポチ ・・死んでやる。 と、手首にナイフを当てようとする。音楽上がる。音楽下がり、 ポチ できないっ。なんなんだお前らー 隊長・B・C 生かすクン。 隊長・B・C走りよりポチを抱きしめる。音楽上がる。ポチ袖に走る。 音楽が上がる。 ポチ、薬ビンを手にうつろな目で座り込む。 隊長一同。ドアを蹴破って走り込む。 隊長 こらー、その瓶を渡しなさーい。おかあさん、も悲しんでいるぞー。 C こらー、たみおー死ぬんじゃないー。 ポチ うるせー。 隊長 だめか。おとうさんも悲しんでるぞー。 C こらー。(思いつかなくって)・・・こらー。 ポチ こらーって、何だ。 隊長 何だか分からないが悲しんでるぞー。ほら近くにいた、セクシーばかねーちゃんも悲しんでるぞー。 B ちゃんと生きてたら、良いことだってあるわよー。ちらっ。 と、Bセクシーポーズ。 ポチ ほ、本当ですかーっ。 と、ポチ襲いかかる。 B ちょちょっとー B、ポチをパチンと殴る。 ポチ 死んでやるー。 と、薬ビンを開け、薬をあおる。 隊長・B・C なにをっ!! B、舞台袖に走る。B掃除機を持って登場。 B ぶおーおおおん。ひゅーん。すぽ。 とポチの口にいれる。 B ぶをーんぶわおーん。うおんうをん。かりかり。ころん。・・すいとったり。 C さすがあねさんっ! ポチの肩を抱いて頷く。ポチ抱きつく。張り手一発。ストップモーション。 音楽上がる。ポチ、靴を脱ぎ丁寧に並べて十字を切る。 隊長 まったー。 ポチ なんだお前たち。 隊長・B・C 秘密結社、生かすクン。 隊長、Aに耳打ち 隊長 プラス・ワン 隊長、真似しろという意味で。ポーズを取る。 隊長 プラス・ワン。・・・ほら。 A ぷ・ぷらすわん。 ポチあきれたように。 ポチ じゃ。 隊長 いけ!プラスワン。 A いけって・・? 隊長 ほらこれをつかえ! 隊長、Aに竹竿を渡す。 A え、あの、その・・なにこれ。 ポチ とう。ぴゅーん。ごん。ぐしゃ。ぐちゃぐちゃ。 ポチ倒れる。 隊長 ほら死んじゃったじゃないか。 隊長ポチを見る。 隊長 もう一回。 ポチ何事もなかったように生き返って。 ポチ わぁーあーあー。 A え、どうするの?これ。 隊長 ほら早くしないと。 B お客さんが。 C 死んじゃうよ。ほら。 ポチ わあーあーあー。 A えっ、ちょっちょっとー ポチ ぐしゃ。ぐは。 とポチ倒れる。 隊長・B・C また、殺した。くびっ。 A そんな・・ 隊長・B・C じゃ、もー一回。 ポチ再び。生き返る。 ポチ 死んでやる。とうっ。うわー A えい。 A舞台前に竹竿を差し出す。 ポチ わあーあーあーあーあー。あれっ? ポチ、竹竿に引っかかって助かる。 隊長 できるじゃない。 B これで免許皆伝ね。 C おめでとう。 A こんなんでいいんですか? 隊長・B・C いいんですっ。 ポチ でも助けられる方も助けられるほうですよね。ホームページの但し書き、「最近当社の業務を邪魔する輩がおります。このような愚考に屈しず自殺の自由を守り抜くために、これからも当社はがんばっていきます。」なんて文字を信じて、2回も3回も自殺止められちゃうやつだっているんだから。 B ポチー。 ポチは喜んで抱きつこうとする。と、Bポチをたたいて。 B うるさい。 隊長、周りの様子を見て。 隊長 よし、それじゃ出動だ! B 今日はこの5件ですね。 隊長 そうだ、1件目が服毒。2件目が飛び降り。この間移動時間が15分しかとれないからてこずらないように。 A・B・C・(ポチ) はいっ。(あいあいさー。) 隊長 で、ここで3時間昼休みで、午後3時に3件目の首つり。空き時間30分で、4件目と5件目の心中だ。今日は休みが長いから気を抜かないように。いいな!! A・B・C・ポチ はいっ。(おーともよ。) C 今日は2件目ですね。 A 何がですか? B しょうがない新入りね。お姉さんが教えてあ・げ・る。 C とんじゃったらおしまいだから。遅れられないのよ。 A あ、そういうこと。 B そーゆーこと。 隊長 それじゃ行くぞ! 音楽!(ボリュームは大きめ。役者はパントマイムのみで表現) A・B・C・ポチそれぞれの方向に散る。隊長以下5人出て来る。扉をたたく。反応がない。ポチ爪を立ててがりがりやる。が、びくともしない。ポチがっくり。B出てくる。ちらっと脚を見せる。C、Bをどつく。もちろんドアはびくともしない。C、ドアノブをさわり開かないことを確認。一歩下がって空手のポーズ。みんな「むりむり」が!Cのパンチでドアは開く。一人で入っていく。みんな後からついていく、客はすでに毒を飲んでぐったりしているようだ、隊長が抱き起こす。そこにすかさずAが、掃除機で薬を吸い取る。隊長、客を抱きしめる。みんなばんざい。B時計を見て「急がなきゃ!!」と大騒ぎ。みんな一生懸命走る。そして現場に到着。危機一髪。Aが急いで高枝切りはさみで切り落とす。みんなばんざーい。ばんざーい。ばんざーい。音楽下がる。 隊長 初日にしては、いい働きだな。 A そんなことないですよ。 隊長 いや、このままだと、わたしの後継者は決定だな。 A え、ちょっと・・ B ずるーい。 隊長 大丈夫。君には女王の地位をあげよう。 C わたしは? 隊長 君はキャプテンだ。 B・C やったーやったーやったー。 ポチ 何だこいつら? A あの、隊長。 隊長 なんだいきなりあらたまって。今すぐ替われって言ってもそれは無理だぞ。 A そんな事じゃないんです。 隊長 そんなことだと。隊長はそんなことかー A あの・・休憩は3時間ですよね。 B そう説明した通りよ。 Aいきなり土下座して。 A お願いします。この3時間の間に、ボクの大事な人を救って下さい。 隊長 え? A ボクの、ボクの大事な人が B 自殺志望なの? A (うなずく。)お願いします。 隊長 それはできない。 A お願いします。 隊長 断る。 A 何でですか? 隊長 とにかくできない。 B・C ・・隊長。 隊長 できないんだ! A 何でですか?仕事じゃないからですか。 隊長 違うんだ早田くん。 A なにがちがうんですか。お願いします。ボクに力を貸して下さい・・。 Aうなだれる。 B ねえ、隊長。行ってあげましょうよ。 隊長 ・・・。 C 隊長。 隊長 まもるくんに書き込んでくる人間は、実は止めて欲しいんだ。だから、書くんだ。・・でも君の彼女は違うだろ。なあ、早田くん。だから僕には救えないんだ。 C 隊長。それってひどくないですか? A 分かりました。 隊長 何が分かったかは知らないが、行って来いよ。何も今すぐ死のうってんじゃないだろ彼女は。 A 行ってきてもいいですか。 隊長 ただし3時間後には戻って来いよ。 A はい。 隊長 クビだぞ帰ってこなかったら。 A はい。 A走り去る。 隊長 さあ、めしだ。めしだ。 B・C・ポチ。静かに座り込んでご飯を食べる。静かな時が流れる。 B 自殺ってなくなるんですか? 隊長 自殺全体を救えるなんて思っていない。救いたいとは思ってるけど。 C 隊長は自殺防止の人なんですか? 隊長 違うよ。ただ、死のうと思ったその勇気を生きる勇気に変えてもらいたいそれだけだ。 B そっかー自殺なんてすごいエネルギーだもんね。 C でも私たちのやってる事ってなんか無意味。 隊長 私たちがやっているのは、自己顕示的自殺の防止なんだ。 C そっか、なんかお客さんうれしそうだもんね。のりこむと。 隊長 彼女はどうやってかしらんが早田くんに知らせてきたんだろ。だからそれを救えるのは彼だけなんだ。 B いいなー。わたしにも春。来ないかなー。 ポチ 大丈夫。お前の頭は常春だ。 B ぽちーわたしと結婚してー Bポチを抱きしめる。 隊長 人が死ぬってことは自分の尊厳を守るってことなんだ。彼が彼女の尊厳を守ってあげる。それが、「愛する」ってことなんじゃないかな。 C 何じゃこの臭い。 B うわー。くさっ。 隊長 なぬっ? と、隊長追いかけ回す。みんな逃げる。つかれて、みんなその場にうずくまる。しばらくすると、Aが笑顔で走ってくる。 B 死んだ?わたしがすぐ忘れさせてあげるから。 C こらー。・・どうだったの。 Aにこにこしてる。 C やばいよこいつ B 本当にどうかしちゃったのかな? 隊長 任務をあけていったんだ。報告ぐらいせい。 A 休み時間でしょ?さ、行きましょ。次の仕事。 隊長 なんなんだー。その態度? A わたしが次期隊長だー。 隊長 お前になんか譲るか。 A さあ、行ってみよ。 と、A出ていく。 隊長・B・C こらっ。 隊長以下後を追う。なぜかポチ舞台に残る。A戻ってくる。 ポチ 何だよ。 A 自殺じゃなくって。自活。じ・か・つ。一人暮らししたいんだってー A走り去る。 ポチ バカだな人間って。 音楽上がる。 ポチ客席にあっかんべーして走り去る。 幕