「ビデオレター」-女はそして飛び立つ-     作 岩川光一朗 潤色 めかおんち。 元、恋人の結婚の突然の知らせを受けて千春は動揺している。そして、思いついたのが余興がわりのビデオレター。友人のかなでと一緒にビデオの撮影を始める。 ちはる 今、ここ鷹栖メロディーホールにて新郎浩二君と新婦小百合さんの華燭の宴が催されています。盛大な結婚披露宴。何度、憧れたことか。よよよよよ。 さて、仕事の都合で出席出来ない私はビデオレターでお祝いの言葉を述べたいと思います。2人とも幸せになってね。私はぼろ雑巾だけれど気にしないでね。 さて、世紀のカウントダウン。今から5秒以内に2人の結婚に異議を唱える者がいない場合。2人の結婚は完璧に認められるのです。では、カウントダウン5、4,3,2,待っておくんなまし。(ちはるは老婆と化している。) 平成13年2月12日。わしは一生この日をわすれんばい。『ちはるちゃん。おいは海外協力隊へ、エルサルバドルへ行くばい。生きては帰られん。おいの気持ちしっとるやろ。最後の思い出に、ちはるちゃん。神社の境内でまっとるよ。』なんね。浩二。あの約束は嘘やったんか。わしの純情はどーしてくれる。吹く風もほてる身体も熱々の鍋焼きうどんのようじゃった。 浩二。何が結婚ね。自分一人が幸せになって、わしの青春を返してくれー。 他の女の元に走るなんてゆるせんばい。わしの方が何倍も魅力的じゃ。 女の魅力は年じゃなか。心意気たい。戻ってきてくんろ。戻ってきなっせ。 愛に年齢制限はありゃあせん。 かなで この色つき婆。愛には体力制限があるんだよ。 高血圧はダメなのよ。糖尿病もダメなのよ。心臓病も絶対禁止。 まして、2人でバイアグラのんでどーするの。もーいゃ。カウンセラーの言うこと聞きなさい。失楽園じゃないんだよ。 ちはる、婆さんから正気に戻る。 ちはる もういゃ。ダメ、こんなビデオレター。未練だわ。 うなだれて落ち込むちはる。 救いようのない間。 かなで、ビールを渡し2人で飲む。 かなで でもさ。何でビデオレターなの? ちはる 聞かないで……辛いから。 変な間 かなで 良くある事じゃない。私もドタキャンされたことあるし……。 早く忘れよう。いいじゃない。馬鹿な男の1人や2人。どうってことないじゃん。 ちはる 五人目。 沈黙。 かなで 私、浩二嫌いだったんだ。何日もお風呂に入らないし。同じ靴下毎日はいてるし、そのくせに香水のにおいぷんぶんさせているし。ちはるには似合わないよ。 そうそう、この間コンパに行ったのね。馬鹿ばっかり。ホストクラブの真似ばかりする変態はいるし、がっかりだよ。 いい男ってたいがい結婚してるし、男のカスの展示会。がっかりよ。 ちはる いい男って結婚しちゃうんだよね。 余計に落ち込んでいく。泣き声が大きくなる。 微妙な間。 かなで かわいいよちはるは。 ちはる かなでだって。 かなで これでも可愛い?豚の真似。 ちはる 不細工。 かなで やっぱりそうか。 2人で大笑いをする。 ちはる あんた。良い奴だよね。不細工だけど良い奴だよね。でも、そんなんじゃない。 かなで 解ってるよ。何も言わなくて良いよ。 ちはる よし、カメラ回してよ。 かなで まだやるの?何のために? ちはる 理由なんて無い。 かなで それじゃ。いくよ。3、2,1,はい。 ちはる 幸せになれよ。子どもいっぱいつくれよ。じゃ、さよなら。 かなで えっ?これでお終い。?それでいいの? ちはる いいんだよ。これで、明日があるから…。 ちはるとかなでは去っていく。振り返りもせずに。 あかりが小さくなり、お終い。