「さなぎ。まゆ。ぬけがら。そしてとびたつ。」                                   作 岩川 光一朗 物事とどう付き合っていくか。最近そういうことばかり考えています。真実は1つ。でも、その真実に向き合う自分の事実は無数。とすると、自分はどうするのか。そこが人生の‘カギ’…らしい。エル・サルヴァドルより。 (登場人物) 女1…ちはる 女2…かなで 音楽。幕が開く。女2、三脚に取り付けたビデオカメラで女1を撮っている。舞台中央に長ソファー。 女1 今、ここ鷹栖メロディーホテルでは、山田家、新郎こうじ、新婦ゆりこさんの結婚披露宴が盛大に行われています。そこで、今日は、新郎こうじさんにひとこと言いたいことがあるという。素敵な女性に登場してもらいましょう。それでは、どうぞーーっ。 女1。ばばあを演じる。 女1 おいやぁ。ほげぇーほへー。ここが、鷹栖かねぇ。何じゃあの趣味の悪い織物はぁ。はぁ?ゆーから織り?しらんしらん。織物といえば、錦織。錦織〜じゃろ。ぐふふ。…少年隊じゃ。それぐらい分かれーーっ。日本の誇る軍隊、自衛隊。作者の働く海外協力隊に続く日本3大隊のひとつじゃ。はー、ふーっ。入れ歯ががたがた言ってしもうた。 はっと、何かに気づいて。 女1 こらーーっ!こうじー結婚たぁ何事じゃぁ。ワシを捨てて、他の女のもとに走るなんてふとどきじゃぁ。ほれっ。ワシの方が、ずーーっと何倍も何倍も魅力的じゃろ?なっ。もどってきなっせ。はよー。今なら間に合うきにぃ。…ストップストップ。だめだね、こんなんじゃ。お笑いじゃん。 女2 はい。 と、ビールを手渡す。2人缶をあけ、同時に飲む。「ぐびっぐびっ。ぷはーーーーっ。」 ※女2 でもさ、何でビデオレターなの? 女1下を向いている。肩が震えている。どうやら泣いているらしい。女2何も言えなくなる。が、女1を励ますように、そしてまた、自分にも思い当たる昔の忘れられない男のことを振り切るように。 女2 早く忘れとこっ。…いいじゃん。炊飯器かびらすような男なんて。どーしょもないよ。まじ。それに、言ってたじゃん。背中かゆいの柱にこすりつけるからきらいとか。フロ場の棚から防水加工したエロ本見つけたとか。ろくな男じゃないよ。エロ本まではいいけど。防水加工だよ。しかも自作のビニール透明シートでしょ。異常だって。ねっ。 女1 …。 女2 かわいいよちはるは。 女1 …かなでだって。 女2鼻をぶたにして。 女2 ブサイク。 女1 分かってるよ。 女2 ひっどーい。今かわいいって言ったじゃない。 女1、女2、笑う。 女1 ブサイクだけどいい奴だよ。…でもそういうんじゃないんだよね。 女2 なにがさっ? 女1 よしっ。カメラ回してよ。 女2 まだやるの? 女1頷いて。 女1 乗りかかった船でしょ?飛び込んだら外は大海原よっ。 女2 ま、いいけどさっ。嵐の夜には近くの港にすみやかに入るのよ。普通は。 音楽。シャンソンか何かが良いかな?女2ビデオのスイッチをいじり撮影開始。女1女2にこいって感じで、フレームの中に引き入れる。女2抗いながらも、しょうがないからフレームに入る。女1片手にビール片手は女2の肩に手を置いて。最高の笑顔で。 女1 幸せになれよっ。 捨てぜりふのようにビデオに向かって言い残し。女1さっさとフレームから去る。 女2 え?おわり?それでいいの??(女1にともビデオにむかってとも言えないような口調で)ばーか。 女2。女1を追いかけて走って去る。やがて、女2が戻ってきて。ビデオカメラのスイッチを切ると同時に。舞台照明暗転。そして、音楽F.O. (幕)