『ヒーローバイブレイション』    作・甘夏ドリンカー  時:近未来 --------------------------------------------------------------------------------  【登場人物】  赤吉 良(あかよし りょう)→17歳・高校生     青ノ助(せいのすけ) →18歳・浪人生     湯黄(ゆき)     →18歳・短大生     桃夜(とうや)    →21歳・フリーター     黒(こく)      →21歳・大学生     緑柳(りょくりゅう) →25歳・お店勤務    (声         →ラジオのアナウンサー) -------------------------------------------------------------------------------- 11111111.願う、正義             6人の人物が舞台にシルエットで浮かび上がる       それぞれがそれぞれ思いのままのほうを向いている レッド  平和という名の砂煙が、僕らの周りを汚して消えた。 ブルー  蒼い空が裂け、血流という名の悪魔が突然僕らに襲いかかる。 ブラック 襲われたのではない。悪魔は僕らを抱いたのだ、その真っ黒なる懐に。 ピンク  抱いたのではない。悪魔は僕らにささやいたのだ。そっと、桃色の華のように。 イエロー ささやいたのではない。叫んだのだ。そう、黄金(こがね)色の音律のように。 グリーン 音律ではない。むしろもっと、緑の葉の影で流れて息づくような。 ブルー  それは、血流。勢いの空間でそれはある種の宝石のように弾けて。 一同   僕らを染めた。 レッド  紅に。 一同   視力を奪う。 レッド  紅に? 一同   何も見えない。 レッド  見えないのではない。 一同   何も見えない。 レッド  見ようとしていないだけだ。 ブルー  平和という名の イエロー 砂煙が ピンク  僕らの周りを ブラック 汚して グリーン 消えて レッド  僕らという名の正義の剣は、周りの汚れを光で消した。 全員   かもしれない。       暗闇 悪魔、降臨。。。 22222222.ミッションエスペシャル、始動       舞台は、どっかのちょっとすたれた事務所のような所       桃夜・黒・緑柳、雑誌を読んだり化粧してたり寝てたりゲームボーイしてたり       まあ思い思いのことをしている アットホームな感じ       でかいミーティングデスクには、一人の少年(赤吉)が意識無く寝ている       それを前にして立っているのは、青ノ助。観察している       しばらくすると、湯黄がお盆に色とりどりのコップを人数分のせて入って来る 湯黄   青ノ助、どう?彼、起きた? 青ノ助  見たら分かるだろう。これが42.195km走り終わった男に見えるか。  湯黄   見ようによっては見える。はい、コーラ。(と、お盆の上青いのコップを一つわたす) 青ノ助  ちゃんと炭酸抜いただろうな。 湯黄   抜いた抜いた。 緑柳   ユッキン〜。アタシのコーヒーはぁ? 湯黄   はいはい。ちゃんと、ミルク21杯入れといたからね。(緑のコップをわたす) 緑柳   ナイスファイトよ、ユッキン。それでこそ、我が妹分。 湯黄   黒ちゃん、飲む? 黒    もらうわ。もちろんメイドインバンガルーダのジャパニーズティーよね? 湯黄   うん。手に入れるの一苦労だけどね。(黒のコップをわたす) 桃夜   湯黄。俺の。 湯黄   はいはい分かりましたよ。ほれ、アクリスエット。(ピンクのコップをわたす) 桃夜   ちゃんとアクエリアスとポカリスエット2:1の割合だろうな。 湯黄   割合です。定規で測りました。 桃夜   よし。 湯黄   は〜。みんなちょっとワガママだよ。飲み物作るだけで一苦労だっつの。      (お盆にの残った黄色のコップをとりグビグビ飲む) 青ノ助  文句を言うなー。カルピス水で薄めない女めー。 湯黄   っくわー濃い。サイコー。 緑柳   ねぇねぇ、ユッキン。カルピスって口のなかなんか白いの残らない? 湯黄   それがまた快感なのよ。 黒    ……変態。 湯黄   おだまり。 桃夜   青ノ助。そろそろ3時間たつぞ。薬のききめ切れてもいいだろう。ソイツ平気か。      犯罪は絶対にタブーだぞ。 青ノ助  うーん。なんだか起きる気配全くナッシング。 緑柳   いやーん、ちょっとちょっとソリャやばいんでなーいのー? 湯黄   緑柳ちゃん、その、隣でエロビデオを見てる友人を止めるふりをしてちょっとワクワク      しちゃってる女子高生みたいな反応はやめて。 黒    女子高生そんなことしないわよ。あんたじゃないんだから。 湯黄   うえ!?思春期なんてそんなもんでしょ!? 桃夜   思春期という言葉の意味を履き違えないでいただきたい。 緑柳   そんなこと言ってる桃夜ちゃんが、一番エロいわよねぇ。全く、ここのルール違反      じゃない? 湯黄   そーだそーだぁ。エロエロじゃ〜 黒    言えてる。エロいわよね。 桃夜   何を根拠に言ってるんだてめーらは。 三人   ……顔? 桃夜   それは、いたしかたねぇ!! 青ノ助  君達。エロ話に花を咲かせてないで、少しはコッチも気にしてくれ。 4人   (青ノ助の顔を見つめる) 青ノ助  何だよ。 4人   (青ノ助を指差して)キングオブエロ。 青ノ助  お前らいつかギャフンと言わせてやるぅぅっ!!(と、寝ている赤吉にチョップ一発) 赤吉   ぎゃふん。 青ノ助  いや、お前は言わなくていーから。 黒    つっこみ所じゃないですね。 青ノ助  あ、やべ。 赤吉   親父さん、だから言ったでしょ!ツユは丼ぶりのこのラインまでだって!(と起き上がる)       沈黙 赤吉   アレ?フランス料理の店じゃない…。 一同   今のフランス料理っ!? 赤吉   え? 一同   (一生懸命隠れようとがんばる) 赤吉   何してんですかあ。 湯黄   ちょっと、ちょっとなんであたしらビクビクしてんの。 緑柳   本能だわ。本能がアタシに命じているの。 黒    別に私はヘーキですよ。ヘーキですけど、でも、ちょっと、ヘーキ、ですよ。 青ノ助  現役大学生の使う文法じゃねーな。 桃夜   万年浪人生には言われたくないんじゃないか。 湯黄   「万年浪人生」ってもうむしろ浪人生じゃないじゃん。あははは。 一同   あははははは。 赤吉   あの… 一同   ごめんなさい!!!! 赤吉   突然謝られたー。 青ノ助  もう謝ったからな。謝ったから文句言いッコなしだぞ。 赤吉   突然偉そうだ。 湯黄   (口真似)「突然エロそうだ」 青ノ助  お前(赤吉)には礼儀ってモンがないのか!?俺ら初対面だぞ。 赤吉   僕は何も言ってませんよぅ。 黒    嘘つき。嘘つきはここには必要ないわよ。 赤吉   嘘ついてませんて。 桃夜   本当に何も言ってないのか。 赤吉   は? 桃夜   一言もか。 赤吉   え? 桃夜   息もしてないのか。 赤吉   うぇえ? 桃夜   (遮って)っは〜そりゃ脱帽だ。 緑柳   おお、我等の村が〜村が〜母なる神・メリュビショーレ様の怒りで滅びてゆく〜。 桃夜   っは〜そりゃ滅亡だ。 湯黄   この壁を越えればシャバだ。あばよ!ピカーッ、にゃろうポリこうめ、追っかけて      きやがった。 桃夜   っは〜そりゃ脱獄だ。 赤吉   何なんですか。一体。 黒    そのツッコミはいただけないわ。 黄桃緑  いただけないっす。 赤吉   何なんですかあ。一体〜。 青ノ助  ご要望にお応えしてメンバー会議しまーす。シュウゴー。 一同   うぃーっす。       それぞれコップを持って、中央のデスクに集まり席に着く       赤吉、デスクに座ったまま 赤吉   僕、食われるんですか。 青ノ助  まあ、ある意味。 赤吉   そこは、否定してください。 湯黄   まあ、ここ座りな。 赤吉   はい…。 桃夜   青ノ助。始めてくれ。 青ノ助  (うなずく) 一同   (うなずきかえす)       一同、赤吉を見る       うなづけ、うなづけ、と動作で合図 赤吉   え?あ、はい(と、うなずく)       突然、エンジン起動のような「グワングワン」みたいな音が       してくる 青ノ助  ミッションエスペシャル、始動。ミッションエスペシャル始動。 湯黄   ミッションエスペシャル始動確認。セフティーバー確認。解除。――完了。 桃夜   コントロールパネル、キーロック確認。解除。―――完了。 黒    敵指標、94,3285。ノーコンタクト範囲。始動、了承。 緑柳   マイクテストマイクテスト。マイクテスト完了。 青ノ助  ミッションエスペシャル… 一同   発進!!!!       エンジン音大きくなる テンション最高潮       しかしプツリとエンジン音消える 青ノ助  えー、それでは今回の議題を発表しまーす。 一同   はーい。 赤吉   普通に始めるんだっ!? 青ノ助  今回の議題は皆さん知ってのとおりです。黒ちゃん、書記。 黒    ラジャ。(と、ホワイトボードにでかでかと文字を書く)       「新メンバー加入」 青ノ助  緑柳。自慢の声で読み上げてくれ。 緑柳   ラジャ。(咳払いののち、赤吉をジッと見つめて)「新メンバー加入」。 湯黄   (赤良しを見つめて)新メンバー加入。 桃夜   (赤良しを見つめて)新メンバー加入。 青ノ助  これからよろしくレッド!!(握手のために手を差し出す) 赤吉   (その手をピシッとはらいのける) 青ノ助  ピドイ!! 赤吉   それはこっちの台詞です。なんなんですか、ココは一体。あなた達は一体。 桃夜   そう急かすな。これから説明すんだからよ。 緑柳   あんまり急ぐと女は逃げるわよ。 湯黄   そんなこと聞いてなーいあはははは。 黒    まあ、あなたが最初はパニックになるのも無理はありません。赤吉 良さん。 赤吉   どうして僕の名前を知ってるんですか。 青ノ助  君のことはもう調べつくしているよ。(ポケットごそごそしはじめる)これじゃなくて      これでもなくて、あーもうなんでこんなもん入ってるんだよ。(ポケットからガムの      ゴミやらキューピーちゃん人形やら出てくる)あ、あった。これが君の資料さ。      (グチャグチャに丸められた汚らしい紙を示して) 赤吉   ……。 湯黄   驚いて声も出ないって?あはははそりゃそーだろー。 赤吉   うん。いろんな激動が僕に押しよせてきています。 青ノ助  赤吉良。17歳。平原高校普通科・学生。好きな言葉、「正義は必ず勝つ」 一同   (何回もうなずく) 赤吉   どうしてそんなこと知ってるんですか。 青ノ助  尊敬する人、「ウルトラマンとかそーゆーの」 一同   (何回もうなずく) 赤吉   だから、どうしてそんなの知ってるんですか!? 青ノ助  将来の夢。 赤吉   もうやめてください!プライバシーの侵害だ。 青ノ助  将来の夢は……       赤吉、聞きたくないのか、耳をふさぐ 一同   ピース・ヒーロー。       照明、突然赤 一同シルエット 33333333.ピース・ヒーロー、登場 レッド  (一人サスがあたる 耳をふさいでいる)       不気味な静寂空間 ゆっくりとレッド以外の人間が様々に散る       ブルー  悪魔、降臨。         その声と同時に、けたたましいサイレンの音や騒音が響く!       以下の台詞、一人一人バラバラにかぶせて言う ブルー  助けて助けて助けて苦しい息が出来ないよだって押しつぶされちゃう消えちゃう      だって苦しい痛い助けて助けて イエロー みんなどこに行ったのやだよ一人はやだよでも一人にならなきゃやだよ助けてたすけて      みんなはどこあたしはどこ皆は誰私は何 ピンク  見えない見えない何も見えないこんな世界はいやなんだどうしてここは一体どうなった      何もできない助けて助けて ブラック 動きたくないの何もできないもの逃げてるわけではないうるさい逃げてなんかない      わからない逃げたくない助けて助けて グリーン 落ちてきた何かがおちて痛くてやめてだって知らない知らない悪くない絶対に      だって知らないくせに助けて助けて レッド  うるさい……。 一同   (↑の台詞でピタリと声がやむ) レッド  ……。 一同   タ レッド  うるさい…。 一同   ス レッド  うるさい。 一同   ケ レッド  やめろ。言うな。わかっている。 一同   テ。       突如、何かが崩れるけたたましい音   全員   そうして恐怖はやってくる。      当たり前のように、無機質のように。 イエロー きゃー助けて! ブラック 誰か助けて! 女性陣  助けて―――――――――――――――――――――――!! レッド  とう! 男性陣  そうしてやっぱり決まってヤツは現れるのだ。 レッド  やめろ!やめるんだ!!(手を虚空へのばす) ブルー  やっぱり助けに来てくれたんだね、 一同   ピース・ヒーロー!! 44444444.ピース・ヒーローズ、心得             またしても突然照明がもとの地明かりに戻る       手を虚空へのばしっぱなしの赤吉 青ノ助  赤吉くん。 赤吉   え?あ、僕…。 桃夜   なるほど。青ノ助、お前なかなか良い人材見つけてきたな。 青ノ助  まかせたまえよ。ふははははは。 湯黄   そーだねぇ。上出来上出来。 緑柳   よろしく、赤吉ちゃん。 赤吉   何を言ってるんですかあ。 黒    今のメンタルシミュレーションで分かりました。 赤吉   メンタルシミュレーション? 湯黄   まあ、心の中を見やすくするみたいな感じ? 桃夜   一種の避けては通れない試験だな。このシミュレーションをして、選ぶんだ。 赤吉   うえ?何を言って… 黒    あなたは、この団体に入る義務があります。私たちが探していたのは、まさにあなた      なんです。 赤吉   僕には何がなんだかわからないんですよ。いきなり目が覚めたらこんなトコに      いるし、突然「団体」とか「入る」とか。そもそもなんで僕ここにいるんですか。      そうだ、そこだ、どうして僕、ここにいるんだ。 青ノ助  まあ落ち着きたまえよ。 赤吉   これが落ち着いていられますか。立派な誘拐ですよ誘拐。 桃夜   失礼な。俺らは絶対そんなことはしない。 赤吉   してるじゃないですか実際。 湯黄   あんたは誘拐されたんじゃない。もともとココにいるべき人間なのよ。選ばれし者よ。 赤吉   ……僕、典型的な日本人ですよ。お正月もやるしお盆もやるけど、クリスマスもやるし      場合によっちゃ地域の活動でハロウィンもやりましたよ。 緑柳   あーんもーやだぁ。あたしら宗教団体じゃないわよー。あたしだって神様にすがってる      暇あったらお金と男にすがってるものー。 湯黄   あははは、緑柳ちゃんの場合お金イコール男だけどねぇ。 緑柳   やだわー、この子ったら。きょほほほ〜。 赤吉   やってられません。さよなら。(去ろうとする) 青ノ助  (赤吉の背中に)君はヒーローになりたくないかい。 赤吉   (足が止まる) 青ノ助  正義の味方になってみたくはないかね。ここはそういう団体だ。 赤吉   どういう意味ですか…?       一同、突然ガタガタっと立ち上がる       各々、かっこいいポーズ 男性陣  僕たち 女性陣  私たちは 一同   平和を守るヒーローなん・でッす。 赤吉   ………。(無言で去ろうとする) 一同   待て待て待て待て。 赤吉   あなた達、絶対頭おかしいですよ。そんな子供みたいなこと言って。やってられません。 桃夜   子供?本当に子供だと思ってるか。子供が正義を信念に何かを守れると思うか。 赤吉   ……。 緑柳   できないわよね。子供だもの。平和とか正義とかそんなの全部子供にはどうでもいいこ      となのよ。 青ノ助  正義・平和。それらを本当に欲しているのは、むしろ大人だろう。 赤吉   知りません。 青ノ助  知ってるさ。君は俺らと一緒でかしこいから。 赤吉   僕はかしこくなんかない。 湯黄   まあそんなことはいいわ。でもね、本当にヒーローになれるのは、やっぱりそれなりの素質      がないとダメだと思うのよ。 赤吉   素質? 湯黄   あんたにはその素質があんのよ。まあ見てなさいって。       一同、ホワイトボードの字を消して自分の名前を書き連ねる       名前にある色の漢字に丸をつける 青ノ助  これを見て共通点はなんだと思う? 赤吉   ……漢字。 黒    ばか。 赤吉   ……日本語? 黒    かば。       青ノ助とか、ホワイトボードの近くの人間丸をつけた色の漢字を       必死に指差す 赤吉   青。黄色。桃色。黒。緑…。 黒    共通点は? 赤吉   色の名前…。 青ノ助  ワッチュアネーム? 赤吉   赤吉、良です。(同時にホワイトボードに一番大きく名前を書かれる) 青ノ助  そうだ!ソレだ!ヒーローにかかせないのは、色なんだ!! 湯黄   過去何年の歴史をふりかえっても、ヒーローってやっぱり「色」なのよ! 緑柳   そしてその傾向を見ると99,9%の確率で、ヒーローのリーダーは、赤吉くん。いや      むしろ… 一同   (赤吉を指差す)レッド!!君だ!! 赤吉   知るかあああああああああああああああああああああああああ!?      なんですか、ちょっと真面目なこと言ってるのかと思ったら結局オチはそれですか!? 桃夜   ばっきゃろー!(赤吉にパンチ) 赤吉   なにすんですかあ、いきなり。 桃夜   お前に俺の気持ちのいってー何がわかるってんだい。 黒    出た。桃夜の江戸っこ節。 赤吉   ハイ? 桃夜   見ての通り俺は男だ。男なんだ。けどな、俺の名前をみやがれ。       ホワイトボードを誰がしかが指差す 赤吉   もも…、よる?何て読むんですか。 桃夜   「とうや」だ。 赤吉   別にかっくいいじゃないですか。 桃夜   漢字をよく見ろ。 赤吉   え?桃…。桃?桃色。あ!あなた男のくせにピンクですかあ!?だっせー! 桃夜   お母さんなんて嫌いだああああ〜!!       一同、泣き崩れる 赤吉   いや、あの、あ。すいませんでした。みなさんそんなに気にしてたなんて知らなかった      から。       しかし、泣いていたと思った桃夜以外の一同の声をよ〜っく聞くと 一同   ワハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 赤吉   実は、全開に笑ってるじゃないですか!? 桃夜   そーゆーヤツらなんだよ。 黒    あ、そうそうついでに。これ、「くろ」って書いてありますが私の名前は「こく」って      読むので間違えないでくださいね。赤!吉くん。 湯黄   あたしの名前、そのまま。「ゆき」だからね。赤!吉くん。 緑柳   アタシはちょこっと変わってるでしょう。別にお店での名前じゃないのよ、本名本名。      「りょくりゅう」ちゃんって呼んでね。赤!吉ちゃん。 青ノ助  俺はけっこうそのままだな「せいのすけ」ってゆーんだ。男気満載な名前だろう、赤!      吉くん。 赤吉   みなさん、わざわざ「赤!吉」って赤を強調させなくてもいいですから。      僕こんな団体入りませんし。 湯黄   まだそんなこと言ってるの!? 黒    あきれました…。あなたは男っていう名のプライドはないのですか。 赤吉   プライドあるから入らないって言ってるんです。 桃夜   (妙な納得)パラドックスか。 赤吉   意味わかりません。 青ノ助  赤吉くん。君がそこまで頑固だったとはつゆ知らずだったよ。      それじゃあミッションBにウツラサセテいただこうとする!! 赤吉   日本語ままなってないじゃないですか…。 青ノ助  赤吉くん。ヒーローに必要なものの一つは、一体なんだと思うかね? 赤吉   ……ギャラ。 湯黄   バッキャロ!てめえヒーローの風上にもおけねぇぜ!! 赤吉   別にジョーダンですけど。 桃夜   正解は、『必殺技』だ。 赤吉   ヒッサツワザ? 一同   うむ。 青ノ助  そこで今日は、新しい必殺技を考えてみようではないか!!      『必殺技』を考える際に重要なのは、 湯黄   かっこよさ。 黒    名前。 桃夜   時間が長い。 緑柳   合体。       一同、赤吉に注目 赤吉   ……努力。 一同   ヒュ〜!! 青ノ助  以上を最大限いかして、『必殺技』を考えるぞー! 一同   オー!! 赤吉   すいません。 一同   ん? 赤吉   ふと思ったんですけど。 青ノ助  何だい赤吉くん。 赤吉   今出た意見って、かっこよさと名前と時間と合体と…努力、ですよね。 青ノ助  実にその通り。 赤吉   「強い」っていうのはシカトですか。 一同   ……。 赤吉   『必殺技』ですよ。必ず殺すって書いて必殺ですよ。強くないとダメなんじゃ… 黒    (無言で赤吉にチョップ) 赤吉   痛いです。 黒    お黙りなさい、小童。 赤吉   コワッパ…。 黒    いいですか?『必殺技』っていうものは、形だけが命なんです。いかにかっこよく見えるか     が一番の問題なんですよ。強さなんて二の次です。 一同   (拍手) 赤吉   わからない!僕にはあなた達の価値観が分からない!! 青ノ助  さ。必殺技考えるぞー。 湯黄   ね、ね、あたしやってみたいのあるの。緑柳ちゃん、黒ちゃん手伝って。       せこせこ3人が動き出す 緑柳、黒、肩を並べてよつんばい       その上に湯黄がよつんばい 湯黄   ピラミッド!! 赤吉   必殺してねぇ!       桃夜、その隣に立ち、両手を上にあげて斜めに傾く 桃夜   ピサの斜塔!! 赤吉   確かに傾いてるけど!!       青ノ助、赤吉の肩に自分の手を乗せる 赤吉も青ノ助につられて相手の       肩に手を乗せる 首を下にさげる 青ノ助  羅生門!! 赤吉   しょぼい!! 一同   必殺☆世界三大変な建物特集!!       沈黙  しばらく間       一同、いそいそと椅子に戻る 一同   (巨大な溜息) 赤吉   やった事メチャメチャ後悔してるじゃないっすか!? 青ノ助  じゃあ次の意見ある人! 緑柳   はいはい!! 赤吉   いや、てか立ち直りはやいなー…。       緑柳、前に出る お姉さん座り 緑柳   んもー、アンタも好きねぇ。ちょっとだぁけよー。チラ。 青ノ助  それは必殺じゃなくて悩殺です。       桃夜、前に出る 桃夜   (マイムで首を締めながら)お前なんかお前なんか死ねばいいんだぁ!! 青ノ助  それは絞殺です!!       黒、前に出る 黒    (何かを書いている)むむむ〜。福沢諭吉は二重かな?一重かな?ふむふむ。 青ノ助  それは偽札です!!って、もうええわ。 一同   どうも、ありがとうございました〜。 赤吉   わからないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 青ノ助  みたいなね。 赤吉   まとめないでください。 青ノ助  赤吉くん。君はさっきから小言が多すぎるよ。 湯黄   文句があるなら『必殺技』考えてみなさいよー。 赤吉   っていうか皆さん、『必殺技』ってどんなものをいうかちゃんと知ってますか?      あの有名な「スペシューム光線」とかですよ。分かってますよね!? 一同   え!? 赤吉   何その「今気付いたぁ」みたいなリアクション。 一同   (ポーズをやりながら)スペシューム光線。ぽよよよよよよよよよよよよよよ〜ん。 赤吉   そんな音しません!! 一同   (ポーズそのまま)ぴよぴよぴよぴよぽぽぽ〜ん。 赤吉   なんすか最後の「ぽぽぽ〜ん」って! 一同   (各々何かを考える) 赤吉   何次のネタ考えてるんですか。あー、つかれる…。 青ノ助  ほら来た!! 赤吉   え? 青ノ助  これぞ俺らの『必殺技』。 湯黄   その名も!! 黒    『ボケてボケてボケまくれ☆ 桃夜   相手の敵さんもきっと 緑柳   ツッコミつかれて倒れちゃうぞ技』 青ノ助  見事決まっただろう。どうだい赤吉くん。これでこの「団体」に入りたくなっただろう。 赤吉   どう血迷ってもなりません。 一同   うえええ!? 青ノ助  なななな何がいけないんだ、赤吉くん。 赤吉   あえて言うなら全てです。 青ノ助  ちくしょー。頑固だな。地震・雷・火事・頑固だな。 赤吉   意味がわからん。 青ノ助  そんな頑固な君にはこれだ!!桃夜!! 桃夜   まかせやがれ。いいか、赤吉くん。ヒーローに必要なものは『必殺技』だけじゃない。      筋力だ!柔軟性だ!わかるか。 赤吉   はあ。 桃夜   今から地獄の筋力トレーニングを開始する!起立!       一同、立つ 桃夜   ちゃーんちゃーんちゃーん(ピアノのような挨拶音。それにあわせて一同礼)             一同、前に出て体育座り 赤吉、どうしようもなく見物 桃夜   かえるの歌! 一同   (体を左右にゆらしながらとっても楽しそうに)かえるの歌が・聞こえてくるよ。       一同、足は体育座りのまま上半身を後ろに倒す       腹筋を鍛える体勢 一同   (テンポにあわせて腹筋をする。声、ゴツい)グワ・グワ・グワ・グワ・      (くるっとひっくりかえる。今度は背筋をする)ゲロゲロゲロゲロ・      (くるっとひっくりかえる。再び腹筋)グワ・グワ・グワ♪       一同、そのまま倒れ込む 桃夜   (息がきれぎれ)ど、どーだい赤吉くん。ゴホゴホ、とっても辛そう…、だろう。 赤吉   いや、そんなに大した事してないですよ、思いのほか。 湯黄   (息がきれぎれ)大人はみんなそう言うよ。 赤吉   どこの不良少女ですか。 桃夜   さあ、今度は赤吉くんも参加してみなさい。 赤吉   お言葉ですけど。 青ノ助  言い訳なんか聞きたくないな。 赤吉   コレ、普通の腹筋背筋より効果あるんですか。確かに歌いながらっていうのは効果      ありそうですけどぉ、それ以前に途中で焼肉みたいにクルクルひっくりかえるじゃない      ですか。あれは一番無駄だと思いますよ。 一同   ……。 赤吉   とりあえず、百聞は一見にしかずです。      普通に腹筋やってみてください。       一同、腹筋 赤吉   はい。じゃあ次背筋。       一同、背筋 赤吉   はいヤメ。どっちの方が効果ありそうですか。 一同   ……。             一同、いそいそと椅子に戻る       そして突然 一同   (デスクに顔を伏せて、泣く)うぅぅうううううう〜っ!! 赤吉   勝った。 青ノ助  どうだい、赤吉くん。この「団体」はとっても純粋だろう。さあ入りたまえ。 赤吉   そんな半泣きで言われたって、同情しませんよ。 湯黄   あなたには「情」というものがないの!? 黒    あるとしたら「無情」ですね。 桃夜   ひどい。ひどすぎるぞ赤吉くん。 緑柳   もう、涙も出ない! 赤吉   でも皆さん鼻水でてますよ。 一同   マジ!? 赤吉   うそです。 湯黄   遊ばれてる!絶対遊ばれてる!! 青ノ助  こんな赤吉くんを仲間に入れるにはもうこれしかない!      緑柳! 緑柳   出番ね。まかせなさい。      赤吉ちゃん。ヒーローに大切なのは登場のポーズよ。何がなくともこれがないと      やっぱり始まらないと思うの。 赤吉   …痛い。痛い。いたたたたた〜。すいません僕、なんだかお腹が腹痛で。 一同   へ〜 赤吉   なおかつ頭が頭痛みたいで。 一同   ほ〜 赤吉   (固い笑顔)ふへへへへへ。 一同   (怖い笑顔)ふははははは。 赤吉   早退します!!!!(走り出す) 緑柳   させるかドアホウ!!(首根っこつかむ) 赤吉   (首根っこつかまれて移動はできないが、走る動作はジタバタ続けて)      殺されるぅ!十中八九殺される〜!! 桃夜   失礼なヤツだな、テメーはよ。 黒    正義の味方は犯罪はしません。       沈黙 一同   ……たぶん。 赤吉   おかぁぁぁぁぁぁぁちゃあああああああああん!!!! 緑柳   つべこべ言わない。男だったらさっさとやる。 一同   赤吉くん!! 赤吉   …イチオーですからね。団体には入りませんけど、殺されるのだけは避けなきゃいけない      ので、やるだけですからね。ただそれだけですからね。それだけですよ。 青ノ助  本当はメチャクチャやりたいんじゃないのか? 湯黄   言えてる。 赤吉   さあ、さっさと教えてください。その登場のポーズとやらを。 緑柳   いくわよみんな。今日のレッスン名は『ドンとびっくり。裾広がりだぜ21世紀』よ。 黒    新作ですね。 緑柳   昨日お店にやってきた社長さんが、こーっやって一万円札広げてパタパタやってたのを      見て思いついたのよ。 赤吉   どんなお店に勤めてるんだ…。 緑柳   さ。みんな扇形に並んでー。立ち位置はまかせるわ。      あ、でも赤吉ちゃんは扇形の要の部分ね。       赤吉、緑柳に引っ張られて中央に立つ       一同、それにあわせて扇形をつくる 緑柳、きれいな扇形をつくるため、       いろいろ指示をだす       扇形完成 緑柳   じゃあ、後はいつも通りでーす。よろしくねー。 一同   うぃーっす。(軽くウォーミングアップでアキレス腱をのばしたり首をコキコキしたり      する) 赤吉   え?いや、ハイ?? 緑柳   それじゃあリハいきますー。5秒前、4・3・2・1・キュっ。       緑柳、コッソリと一同がつくる扇形の裏へまわり、椅子を用意してる       以下はそれと同時進行 青ノ助  そこまでだ妖怪ゲルゲンガー。       カッコイイ音楽が流れる 赤吉   (キョロキョロする。まわりの空気がよくわからん) 桃夜   俺らが来たからにはお前らの好きにはさせないぞ。 一同   とう!(その場でジャンプ) 緑柳   (妖怪ゲルゲンガーの声。扇の後ろから)ムムお前らは何者じゃゲルゲー。 湯黄   黄金(こがね)の音律で貴方の心を癒します。ピース・イエロー。(きめポーズ) 黒    漆黒の瞳は真実の花。ピース・ブラック。(きめポーズ) 桃夜   桃色の風を光にのせて。ピース・ピンク。(きめポース) 一同   ぶっ。(ふきだし笑い) 桃夜   笑うなテメーらぁ!! 緑柳   (後ろから)続けて。 青ノ助  青き毛並みの獣の嵐。ピース・ブルー。(きめポーズ) 赤吉   え?はい? 緑柳   何か言って。 赤吉   ……正義の味方。ピースー……レッド? 青ノ助  誰に聞いてるんだ。もーいー、きめポーズしろ。 赤吉   (しょうがなく客席方向に両手でVサイン) 一同   我等!!       一同のテンション最高       しかし、そこに椅子にのって高い所から緑柳が扇形中央から登場 一同   ピース・ヒ… 緑柳   (遮って)ピース・グリーン率いるピース・ヒーローズ、参上!! 一同   うええええええええ!? 緑柳   カットー!      っくわー、心地よいわあ。 湯黄   心地よい!?気持ちいい通り越して心地よい!? 青ノ助  今時「心地よい」なんて言葉使うヤツ久しぶりに見るぞ。       赤吉、そーっと帰ろうとホフク前進開始 黒    そもそもいつからピース・グリーンが私たちを率いてるんですか。 桃夜   そーだそーだ率いられた覚えはねーぞ。 緑柳   ……今日耳日曜。 一同   シャラップ!! 青ノ助  ほんでもって、どこ行きやがる。 一同   レッド!!!! 赤吉   バレた〜…。 青ノ助  赤吉くん。君にも言いたいことがある。 赤吉   はい。 青ノ助  なんだいあのコレは!(Vサインをする) 湯黄   プリクラ初心者じゃないんだから。 黒    しかも両手で。 桃夜   古典的すぎるな。 赤吉   みなさんお言葉ですガッ。 一同   ? 赤吉   僕のことはいい。でもコレ(Vサイン)のことはバカにしないでください。 緑柳   どういう意味? 赤吉   (Vサイン)……PEACE。 一同   はうわッッッッッッッッ!! 赤吉   これはピース。そう、平和の象徴なんです。それをバカにするなんて、正義の味方失格だ。      いや、違う。一人の人間として生きている価値すらない。 青ノ助  やられた…。 湯黄   あたしとしたことが。 黒    ピースと平和をかけていたなんて…。 桃夜   なんて高度な技をやりやがる。 緑柳   赤吉ちゃん、いいえレッド。私たち… 一同   負けたっ。 赤吉   わかればいいんです。 緑柳   みんな、予定変更よ。今日のレッスンはその名も『集合写真』。       突然即興ポーズシーン開始 緑柳   はいはいみんな並んで写真とるよー。 青ノ助  (女口調)まってまって背ぇ低い人は下座ったほーがいいよー。 湯黄   はいはいはーい。      (比較的低い人が座り、2列になる) 緑柳   いいー?とるよー? 一同   オッケー。 緑柳   はいピース・ 一同   ヒーローズ!!(Vサイン) 緑柳   カットー。 青ノ助  決まったな。 湯黄   決まったね。 黒    なんだか、とても新鮮です。 桃夜   言葉にならない心地よさだな。 緑柳   ありがとう。赤吉ちゃん。あなたのおかげで本当の登場ポーズが分かった気がする。 赤吉   いや、あの、アレでいーんですか。 一同   いいの。 赤吉   ホントに? 一同   い・い・の。 赤吉   まあそれじゃあ、よかったです。 青ノ助  どうだい?赤吉くん。なかなか良い団体だろう、ココは。 湯黄   入ってみる気になったかね。 赤吉   ……。この団体って。 青ノ助  ん? 赤吉   名前、『ピース・ヒーローズ』って言うんですか。 緑柳   あれぇ?言ってなかったけ? 赤吉   聞いてません。 桃夜   そりゃあこっちのミスだな。 黒    ごめんなさいね。 赤吉   いえ…、別に、いいんですけど。 青ノ助  赤吉くん? 55555555.パラドックスな、平和 赤吉   偶然ですね。僕が小さい時、それこそまだヒーローに憧れてた時代になりかった      ヒーローの名前、『ピース・ヒーロー』っていうんですよ。 青ノ助  それはすばらしい。 赤吉   でも、僕はこの団体には入りません。 黒    またそんな事言って…。 赤吉   だって、正義って、平和ってなんですか? 一同   ……。 赤吉   いくら頑張っても、僕らには正義をかかげて平和を守るなんてことできないですよ。      だって世界はバカみたいに大きい。 一同   ……。 赤吉   平和を守る『ピース・ヒーロー』なんて夢のまた夢なんだ。       照明、赤くなる       なめらかなクラシックの音楽が鳴り響く       一同   それは一瞬。 ブルー  ヒーローはそのまま、がくりと大地に倒れた伏した。 イエロー 何が起こったのか、よく分からない。悪魔とヒーローが交差したその一瞬。 ブラック ヒーローの胸から腹にかけて、軽快に飛び散る鮮血の雫。 ピンク  ゆっくりゆっくり鮮血は大地に広がっていく。ヒーローの顔は、見えない。 グリーン 悪魔の笑いは高らかに。 一同   ハーッハッハッハッハッハッハ。       沈黙 音楽 ブルー  それでもヒーローは動かない。 イエロー 「ヒーローどーしたの。立ってよ立ってヒーロー。僕らの町を救ってよ」 ブラック それでもヒーローは動かない。 ピンク  「助けて。助けてヒーロー。ヒーロー、僕らを助けて」 グリーン それでもヒーローは動かない。       沈黙 うなだれる一同 レッド  それは一瞬。僕はそのまま、がくりと大地に倒れ伏した。 一同   (がくりと体が崩れ落ちる) レッド  何が起こったのか、よく分からない。悪魔と僕が交差したその一瞬。 一同   (そのままの体制で各々笑い出す)フフフ…。ふははは。ハーッハッハッハッハッハ!! レッド  うるさいだまれ!!僕は負けてなんかないっ。だってヒーローは負けないんだ。どんなに      窮地に陥ったって、負けてはいけない存在なんだ。 一同   うるさいだまれ!! レッド  !! ブルー  「お前に一体何ができるというのだ。 レッド  僕は イエロー 今まで誰かを救えたか。 レッド  僕は ブラック 今まで何かを守れたか。 レッド  僕は ピンク  正義という名の戯言など、 グリーン この私に通用するとでも思ったか」 レッド  (ガクリと体が崩れ落ちる)       音楽 レッド  悪魔の笑いは高らかに、僕の心をえぐって響く。      傷口から流れ出ているのは、真紅の血。大地を染めて、広がりつづける。          もう、諦めてしまおう。情けないとか、思えもしない。      そう、僕はいつも一人で戦っている。負けてもしょうがないじゃないか。しょうがない。 一同   (小さい声で)レッド。 レッド  ……。少し、僕はおかしいかもしれない。諦めたはずだ。負けたはずだ。      それでもまだ期待してしまうんだ。 一同   (さっきより大きいがまだ小さい声で)レッド。   レッド  誰か、 一同   レッド。 レッド  僕を、助けてください。 一同   助けにきたぞ! レッド  え? 一同   レッド!!       照明、白に戻る 音楽、消える 一同   赤吉くん!! 赤吉   え? 青ノ助  どうした?突然ヌボーっとして。 赤吉   いや…。 湯黄   すごい器用だねぇ。目んタマ開いたまま寝れるんだー。 黒    熱帯魚みたいですね。 桃夜   人が話してる最中に熱帯魚さながら寝るなんて、良い度胸してんなぁ。 赤吉   すいません。 緑柳   素直でかわいーわあ。 青ノ助  どうした? 赤吉   帰ります。お世話になりました。(去る) 一同   (コケる)なんじゃそりゃ!! 赤吉   (止まる)だって、おかしいですよ、ココ。 湯黄   なんだかしつれーねー。 赤吉   どうして、どうしてですかあ!? 黒    そんなに抽象的な疑問ばかりブツけられても困ります。 桃夜   答えたくても答えられないぞ。 緑柳   ほら、赤吉ちゃん。落ち着いて。 赤吉   ……忘れたんです。 青ノ助  何を。 赤吉   忘れたんです。僕はヒーローになんてなれないんだから。       赤吉、走り去る 湯黄   赤吉くん!(追おうとする) 青ノ助  追うな、湯黄! 湯黄   どうしてよ。 青ノ助  大丈夫だからだ。 湯黄   どーゆー意味よぉ。       赤吉、去った方とは別の方向から登場 青ノ助  こーゆー意味だ。 赤吉   なんじゃこりゃあああああああああああ!? 湯黄   なるほど。 青ノ助  赤吉くん。君はもう、ココにとらわれてしまったのだよ。わかるかい? 赤吉   だって、あっちから走ってそのまま真っ直ぐ行って、そしたらまたココで。ぅええ!? 黒    赤吉くん。あなたはもう、この団体に入るしかないんですよ。 赤吉   嫌だ。入らない。絶対に僕はココへは入らない! 緑柳   てい。(赤吉に膝カックン) 赤吉   何すんですかあ。 緑柳   いつまで子供みたいにダダこねてるのよ。 赤吉   だって〜…。 桃夜   お前、なんでそんなに往生際悪いの?入りたかったら入ればいいじゃねーか。 赤吉   ……。 青ノ助  正直に言ってごらん。別に俺らは君を取って食おうとか考えてるわけでは…、ないとも      断言できないけど、まあ悪いようには絶対しないから。 赤吉   その言葉、信じていいんですか。 青ノ助  ヒーローは嘘つかない。 赤吉   それ自体が嘘っぽいけど…。まあいいですよ。      青ノ助さんのポッケにグチャグチャになって入ってた資料にもあるように、確かに僕は      平和を守るヒーローになりたかったです。 緑柳   『ピース・ヒーロー』? 赤吉   そうです。でも、それはもう過去の話です。 湯黄   どうして。 赤吉   気付いたんですよ。僕、平和とか正義とか本当に分かってるのかなって。 黒    と、いうと? 赤吉   正義ってなんだ。平和ってなんだ。そんなの個人の自己満足にすぎないじゃないか。      僕が正義の味方だって信じていたって、相手の敵からみればそれはただの平和を狂わす      悪魔だし、相手だって自分が正義だって思ってる。      僕がなりたいのはそんな正義じゃない、平和じゃない。もっと、みんなの、正義とか平和      なんです。 青ノ助  ほー。 赤吉   僕はもう子供じゃない。そんなの一人じゃ無理だって、理解しました。      だから、僕はこの団体には入りません。 一同   ………。 赤吉   言いたいことは言いました。それじゃ。 青ノ助  待ちやがれレッド!! 赤吉   もう僕には言いたいことはありません。 青ノ助  こっちにゃ言いたいことがあるんだ。まあ座れ。 赤吉   …聞きましょう。 青ノ助  行くぞてめーら。イッセーノーッセ!! 一同   (赤吉を指差して)バカじゃんっ? 赤吉   はあ? 青ノ助  赤吉く〜ん。何面白い話してくれちゃってんのさー。 湯黄   正義がなんだとか平和がなんだとか。 黒    笑いこらえるの、必死でした。 桃夜   いやー、腹筋鍛えられた鍛えられた。 緑柳   やめなさいって、みんな赤吉ちゃんに失礼で、しょ、ホホホホホホホ。ガハハハ!! 湯黄   緑柳ちゃんが一番シツレーじゃあん。 赤吉   なんですか皆さん!!せっかく僕が真面目に…。 青ノ助  だって面白いんだもんなぁ。はいはーい面白かった人お手上げ、ピッ! 一同   (手をあげる) 赤吉   全会一致かよ…っ! 青ノ助  いいか、赤吉くん。正義と平和が一体何かの答えを教えてあげようではないか。 赤吉   なんですか。 青ノ助  そんなの決まってるじゃないか。      その答えはずばり、俺達のことをいうのさ。ハーッハッハッハッハッハ! 一同   ハーッハッハッハッハッハ!! 赤吉   病気だああああ。こんなの病気だああああああ。 青ノ助  だってよー、俺らじゃんなあ、正義って。 赤吉   だから、僕の話しちゃんと聞いてました?僕たちがいくら正義だって信じてても他の視点で      は正義じゃない場合もあるんですよ。 湯黄   それでもあたしら正義じゃん? 赤吉   そうですけど、そうじゃないんですよ。 桃夜   パラドックスか。 赤吉   余計な事言わないでください。 黒    だって私たち正義ですよ。平和を守る正義ですもん。間違いない。 赤吉   黒さんまで。あなたはまわりの人よりは頭いいと思ってたのに…っ。 緑柳   だったら何よ。赤吉ちゃんは、自分が悪魔だとでも言いたいの? 赤吉   そんなことはないですけど…。 一同   ほら言った〜。 赤吉   そーゆー意味じゃないんですよ。どーして分からないかなぁ?この人たちは。 青ノ助  はいはーい、自分が正義だと思う人お手上げ、ピッ! 一同   (今度は両手をあげる) 赤吉   (おくれて片手をあげる) 一同   ほら言った〜。 赤吉   違うんですって!だから、もー、違うんだってば〜。 青ノ助  何が違うんだい? 赤吉   正義とか、平和とか…。 湯黄   でも赤吉くんも自分が正義だと思うんでしょ。 赤吉   そうですけど。 黒    だったらそれでいいじゃないですか。 赤吉   そんなんでホントにいいんですか。 桃夜   だってそれが一番重要だろう。 赤吉   重要? 緑柳   そうよ。とっても重要。大切。 赤吉   本当ですか。 青ノ助  自分が正義。それを信じなきゃ、何も始まらないだろう。そこが、正義の、俺らのスタート      じゃないですか。 赤吉   ……。 一同   くわ〜自分ら、かっこいぃぃぃぃ!! 赤吉   ……。 青ノ助  どうだい赤吉良。我等『ピース・ヒーローズ』に入ってみる気になったかね? 赤吉   ……。 青ノ助  赤吉くん?       沈黙 赤吉   自分が、正義…か。わかりました。僕だって男です。もうはっきり決めました。      赤吉 良。『ピース・ヒーローズ』に仮入団させてもらいます。 青ノ助  なんだい「仮」って! 湯黄   はっきり決めてないじゃん! 赤吉   まだこれが正しいのかわからないですもん。 緑柳   これ? 赤吉   僕ら自身が正義説。 桃夜   正しいだろう。 赤吉   そうでしょうか?僕にはまだ分かりません。      もしかしたら、逆かもしれないじゃないですか。 黒    逆? 赤吉   僕らは勝手に自分が正義だって思ってるけど、本当はもしかしたら先に正義っていうもの      があってそれを僕らが目指してるだけかもしれない。 一同   ……? 赤吉   だからみんな色々なんですよ。正義っていう一つのものを目指してるけど、道筋は      違うから。      でも、目指しているものが一緒なら『みんなと同じ一つの平和な世界』ってヤツも不可能      じゃないかもしれませんね。 一同   ……?? 赤吉   わかんないならいいですけど。 一同   パラドックスか。 赤吉   そんな感じです。 青ノ助  でもなんか、やけに深いコト聞けた感じするよな。 湯黄   そうだねえ。さすが赤吉くんって感じだねぇ。 黒    少し勉強になりましたね。 桃夜   負けたよ。やっぱお前にはかなわないわ。 湯黄   あ!あたしアレとってくる。 赤吉   アレ? 湯黄   ふへへへへ。ちょっと待っててね。       湯黄、退場する 緑柳   そうだ!新メンバー加わったことだし、なんだかパーッとさわぎたいわねぇ。 青ノ助  緑柳ナイスアイディア!丁度時間も昼飯時だし、新メンバー歓迎会でもやるか! 一同   イエーイ!! 湯黄   (登場)なになに?どして盛り上がってんの? 黒    パーティーだって。 湯黄   ナイスじゃーん。 青ノ助  いよっしゃ、そんじゃ準備にとりかかるぞえ!!      湯黄と緑柳と俺はパーティーグッズを買ってくる。黒と桃夜は食料確保。      赤吉くんはここで待っててな。イチオー主役だから。 赤吉   はあ。 青ノ助  ほんじゃピース・ヒーローズの諸君、10分後にパーティーグッズを買い占めてここに      再集合。 一同   ラジャ。 湯黄   はい。赤吉くん。これでも飲んで待っててね。(と、赤いコップを渡す) 赤吉   中身なんですか? 湯黄   柳平山脈の雪解け水。 赤吉   スゴイ。一番好きな飲み物だ。 湯黄   そりゃあよかった。 青ノ助  湯黄。時間。 湯黄   ラジャ。じゃあね、赤吉くん。 緑柳   愛してるわん。 黒    行ってきます。 桃夜   腹筋でも鍛えてろや。       それぞれ散る一同 赤吉   あの!       一同、止まる 赤吉   僕、なんだかすごく大変なことを忘れてませんか。 黒    また突然な質問ですね。 緑柳   何々もうボケちゃったのお?若いのに大変ねぇ。 赤吉   いや、やっぱ何でもないです。 桃夜   何じゃそりゃ。 赤吉   気をつけて、行ってらっしゃい。 一同   …ラジャ。       一同去る 青ノ助だけ残る 青ノ助  赤吉 良。 赤吉   はい…? 青ノ助  平和な世界を、作ってくれ。 赤吉   え?       青ノ助、去る 赤吉   なんなんだ一体…。       沈黙 やりきれなくなってコップの中身を全て飲み干す やっぱり沈黙 66666666.願う、世界 赤吉   なんだか静か過ぎて気持ち悪いな。(ふと、デスクにおかれていたラジオが目に入る)      ラジオでも聞くか。       しばらくノイズ 赤吉   なんだよコレ。入り悪いなぁ。      (しばらくチューニングをあわせているが、あくび)ん?なんか眠くなってきた…。      みんなが帰ってくるまで少し寝るか。       そのままゆっくり眠りにはいる赤吉        ノイズにまみれて、アナウンサーの声 声    繰り返します人類始まって以来の大戦争『第三次世界大戦』の結末が決定しました      この核戦争は、人間を…否、動物を、大地を、地球を全てを奪い、収集がつけられません      午前8時に国際連盟から発表された報告によりますと、本日午後12時全世界を爆破、      すなわち消滅させ、この世界大戦を集結させる意向です      我々は託しました 我々の世界を、もっと本当に平和なものにできるであろう人間に      地球に存在する国から1人ずつ、平和を最も愛する人間が選ばれ、その人たちが      第2の地球を作ってくれる予定です      12時まであと60秒を切りました      さよなら地球 ありがとう地球 そしてごめんなさい      次こそは、本当に平和な世界をつくります       プツっとラジオが切れる ノイズ       静かに、クラシックの曲が流れる       12時がやってくる――――――・・・・・・・                     −幕−