『預 言』    作・SHIGE 【登場人物】 なみえ (中学生) 竜 (なみえの友人) ユースケ (なみえの友人) ヒロ (なみえと対立) ななこ (ヒロの友人) かおる (ヒロの友人) 真子斗 (学年一の優等生) セイ (未来人) トミ (セイの弟) -------------------------------------------------------------------------------- 1場 図書室 ◆幕はまだ閉まっている。地鳴りのような音。 ナレーション  1999年7の月。空より来るだろう恐怖の大王が、アンゴルモアの大王を       蘇らせる。前後に火星が幸福に統治する・・・。 ◆チャイムの音、幕あがる ななこ  おっそいなあ、ふたりとも。なにしてんだろ・・・。 ◆ヒロ、かおる、上手から登場 かおる  ごめんね、ななこー。ちこくしちゃったぁ! ななこ  何やってんのよ、ヒロがついてて。 ヒロ    わりい、わりい。かおるが、「忘れ物したー!」とかいって       グズグズしてるもんだから・・・。 かおる  えーっ!ヒロだって、待ち合わせにおくれてきたくせにー! ななこ  と・に・か・く!レポート手伝ってくれっていったのは、そっちなんだからね。       遅刻の罰として、帰りにアイスおごってもらうからね! ヒロ・かおる  えーーーーーーっ! なみえ  (不機嫌そうに)あのさあ、さっきからうるさいんですけど。 ななこ  なあんだ、なみえ居たんだ。 なみえ  居たんだって、あんたたちが来る前から居たんですけど。 ヒロ    何か、用かよ。 なみえ  用かよって、さっきからうるさいっていってんの。ほんとにバカなんだから。       少しは、まわりの迷惑考えたら? ヒロ    てめえなぁ、そんなんだから男できないんだよ。 なみえ  結構です。あんたみたいなバカに何いわれても、痛くも痒くもありません。 ヒロ   何だと! かおる  もー、やめてよ二人ともー。 ななこ  ほっときなよ、かおる。いつものことなんだから。 かおる  でもぉ・・・。 ななこ  どうやったって、ヒロとなみえは波長が合わないの。時間もったいないから、       早いとこ勉強始めようよ。 ヒロ    あぁ・・・。 ◆ユースケ、竜、上手から登場 竜     勉強終わったか? ユースケ 俺らも部活終わったんだ。一緒に帰ろうぜ。 なみえ  竜、ユースケ。ちょっと聞いてよ。 竜     どうしたんだよ? なみえ  また、あのバカに嫌味いわれた。 ヒロ    痛くも痒くもないんじゃなかったのかー。 なみえ  うるさいなぁ、割り込んでこないでよ。 ユースケ おまえら、またやってんのか? 竜     なみえはなみえ、俺は俺。自分で解決してくれ。 なみえ  何よ、ソレ。 ユースケ けっこう、お互いに気があるんじゃねえの? ヒロ    冗談!誰が、こんな性悪、相手にするかよ。 なみえ  やめてよね、ユースケ。それなら、まだ、竜の方がましよ。 竜     なんで、俺がでてくるんだ。 ななこ  ちょっと、ヒロ。せっかく手伝ってあげてんだから、勉強に集中してよ。 ヒロ    おう、わりいな。 かおる  ななこ、怒ってるの? ななこ  別に! ◆真子斗、上手から登場 ユースケ あれ、真子斗じゃん。 真子斗  お邪魔ですか。 かおる  また、勉強しにきたの? 真子斗  遊びには来ませんよ。(下手の机へ) かおる  なんか、感じ悪〜。 ヒロ    さすがは、学年トップの秀才さんだな。 ななこ   ヒロ ヒロ    はいはい 竜     なあ、早く帰ろうぜ。 なみえ  ちょっと、待ってよ。ねえ、もう雨止んでる? ユースケ どうかな・・・。(窓を見て)竜・・・?あれ、何だと思う? 竜     ああ?(一緒に窓を見て)どれが? ユースケ 裏山の上の・・・。ほら、光ってる奴。なみえもきてみろよ。 なみえ  こんな昼間に、星でもあるまいし・・・。ホントに光ってる! 竜     何か、大きくなってないか。 かおる  何々、いったいどうしたの? ◆全員、窓に集まってくる。 ユースケ こっちに、近づいてくる。 ななこ   なんなのよ、一体! 真子斗  (はっと気づいて)みなさん、伏せて下さい! 一同   (口々に)えっ? ◆爆発音、照明は点滅、全員、倒れ込みながら口々に何か叫ぶ。 なみえ  (起きあがりながら)ちょっ・・・何なのよ一体。 ユースケ 飛行機でも、落ちたんじゃねえか。 かおる  ねえ、見て!校庭が半分無くなってるぅ! ヒロ    ほんとかよ。 ななこ  あーあ、なんか大きな穴が開いちゃってるし・・・。 真子斗  隕石・・・だと思います。 竜     隕石? 真子斗  以前に本で読んだことがあります。小さなものでも       宇宙から飛んでくる間に、かなり大きな運動エネルギー持つらしくて       確か、公式によると・・・。 ユースケ あぶねー。もうちょっと早く帰ってたら、今頃タンパク質の固まりに       なってたところだぜ。 かおる  タンパク質の固まり? ヒロ    死んでたって事だよ。 かおる  えっ、ウソ!やだぁ、こわーい。 ◆ブーンという機械的な音、照明が点滅。 なみえ  えっ、ちょっと、今度は何なの! ◆舞台が明るくなる。下手に、セイ、トミが立っている。 ななこ  誰? セイ   驚かして済まない。今、隕石が落ちてこなかったか? 竜     校庭の穴が見えるだろ。 トミ    やはり、間に合わなかったか・・・。 ヒロ    ちょっと何だよ、いきなり現れて・・・ セイ    突然で済まないが、君たちに頼みがある。この地球を救って欲しいんだ。 かおる  はぁ? ユースケ わけわかんねえよ。一体、あんたら何もんなんだ? セイ    信じてもらえないかもしれないが、私たちは2050年から来た       未来人なんだ。私の名はセイ。そして彼は・・・ トミ    トミと申します。お見知り置きを。実は、私たちが来たのは、あなたがたに       大切な頼みがあるからなんです。 真子斗  何でしょう。 セイ    君たちは、ノストラダムスの予言を知っているか。 ななこ  知ってるけど・・・。1999年七の月、空から恐怖の大王が・・・       どうのこうのって奴でしょ? セイ    そう、その予言が現実になってしまったんだ。 ヒロ    そんなこと、信用できねえよ。 トミ    先ほどの隕石が、その証拠です。 ユースケ えっ、ノストラダムスの予言って、貞子の呪いのビデオが流行るんじゃないの? なみえ  あんた、映画の見すぎ。 竜    すいません、話続けて下さい。 セイ   巨大な隕石の衝突により、地球の半分が破壊されたばかりか軌道まで       変わってしまい、環境が一変してしまった。ほとんどの生物は死滅した。       もちろん人間も例外ではない。 トミ    わずかに生き残った者達が宇宙へ飛び立ちました。しかし、なかなか       人間に適した星はありません。宇宙船での生活に疲れ、人々は次々と       死んで行きました。私たちが・・・最後の二人です。やっとの思いで       タイムマシンを発明してここまでたどり着きました。 ヒロ    どうやら、ウソじゃなさそうだな。 なみえ  そんなこと、最初からわかってたわよ。 トミ    人類が生き残る方法は、ただ一つ。過去をかえることです。 真子斗  隕石の衝突を事前に防ぐわけですね。 セイ    その通り。実は、ノストラダムスの生きていた時代にも、こんなことが       あったらしい。 ユースケ その時は、どうしたんだよ。 トミ    彼は、隕石の軌道をかえる機械を発明しました。その時は成功したのですが       1999年には、また戻ってきてしまう。その時のために、ノストラダムスは       予言を残したのです。 かおる  そこまで、わかってたんだったら・・・。 セイ   これらは、すべて地球を離れた後の研究でわかったことなんだ。 竜    で、俺達に頼みって何なんだ? セイ   機械を探してほしいんだ。 ななこ  でも、ノストラダムスって日本人じゃないんでしょ。こんなとこに       あるわけないじゃない。 セイ   いや、隕石の軌道をかえる機械を戦争に利用されるのを恐れてヨーロッパ       から遠く離れた日本に隠したことは確かなんだ。さあ、これが機械の       見取り図だ。(うす茶色の紙をヒロに渡す。) トミ    お願いします。この近くなのはわかってるんです。それに、もう       時間が・・・。 ヒロ    (紙を見ながら)そのでっけえ隕石が落ちてくんのはいつなんだよ。 セイ    ・・・今日の日没だ。 一同   (口々に)ええーっ!マジかよ!等々 竜     今何時だ? ユースケ 3時12分。 ななこ  もう3時間くらいしかないじゃない。 かおる  どおするの?みんな。 ヒロ    よし、決めた。なあ、セイ、俺達が・・・ なみえ  (紙をひったくって)セイ、トミ、安心していからね。あたしらが、       必ず見つけてあげる。そうよね、ユースケ。 竜     (ため息)俺も無条件で参加なんだろ。 なみえ  頼りにしてるわよ。 ヒロ    てめえ、でしゃばんじゃねえよ。(紙を取り返す。) なみえ  あんたみたいな馬鹿に任せられるわけないでしょ。 ヒロ    んだとぉ! セイ    機械は、七人で探してくれたまえ。 一同    ・・・(一斉に)えぇ! ななこ  何よ、それぇ! ユースケ 冗談じゃねえよ。 トミ    兄さん、そろそろ時間が・・・。 セイ    ああ、そうだったな。必ず、七人で・・・。頼むよ。 ◆再び点滅と機械音、セイ、トミ、下手に退場 ヒロ    おい、待てよ。何で七人なんだよ。 なみえ  ちゃんと説明しなさいよ。 ◆照明、もとにもどる。セイ、トミは消えている。 ななこ  いっちゃった・・・。ほんとに、このメンバーで探すの? かおる  何か、最悪〜。 真子斗  そんなこと言ってる場合じゃないんじゃないですか。もう、日没は       迫ってるんですよ。 竜     それもそうだな。取りあえず、手分けして探そうぜ。 なみえ  どうやって、コンビ決めるのよ。 かおる  くじ引き〜。 ユースケ それ、ナイス提案。 ななこ   じゃあ、さらさらっと・・・。 ◆ななこ、ノートにあみだくじをつくる。6人かたまってノートをのぞき込む。  はじめ、がやがやしているが暫くして、気まずい沈黙。 ヒロ    おい、今日は厄日か。 なみえ  あたし、絶対いやよ! ユースケ まあまあ、これも運命だと思って・・・。 かおる  わーい、わたしユースケ君と一緒だー。 竜     俺は、ななことか。 真子斗  あの、七人ってことは、私も入ってるんじゃないでしょうか。 ななこ   あっ、ごめんなさい。そうだ・・・。真子斗さん? 真子斗  はい。 ななこ   いつも冷静なあなたの力が必要なの。 竜     コブラとマングースの戦いが、ただでみられるぜ。 ユースケ 何かあったら、自衛隊を出動させなさい。 なみえ  ちょっと、それどういう意味よ! ヒロ    なあ、俺からも頼むよ。 真子斗  ・・・わかりました。 なみえ  ・・・じゃあ、あたし達は森の方をみてくるわ。 ユースケ 俺達は、住宅街のほうに 竜     あと、ありそうなのは・・・。 ななこ  川沿いは? 竜     いいかもな。 ヒロ    じゃあ、5時にいったん駅前に集合しよう。あ、機械の形見ておけよ。 かおる  じゃあ、みんな後でねー。 ◆暗転 2場 町中 ◆下手から、ユースケとかおる登場 かおる   あー、おなか空いた。ねえユースケ君、何かおごってよ。 ユースケ 悪いけど、持ち合わせがない。 かおる   ねえ、ユースケ君。 ユースケ 何? かおる  日没まで、後2時間だね。 ユースケ そうだな。 かおる   ・・・ねえ、ユースケ君。 ユースケ 何だよ、うるさいなぁ。 かおる   そっちのグループって楽しいの? ユースケ それは・・・。結構楽しい方だと思うぜ。なみえも竜もいい奴だし・・・。 かおる   えーっ、なみえって全然いい人に見えない。 ユースケ そりゃ、ヒロ達からみれば、ただのヒステリー女かもしれないけど       あれで、結構仲間思いなんだぜ。 かおる  ふーん、そうなんだ。 ユースケ そうなの。まあ、俺達だってヒロのいいところが見えないだけかも       しれないけどな。 かおる  ・・・何か、ユースケ君ってかっこいい。 ユースケ 今頃、気づいたのか。気は優しくて力持ち、その上ハンサムで・・・ かおる  そうやって、馬鹿やってるとこしか見てなかったから・・・。 ユースケ ・・・かおるに、馬鹿っていわれちゃ、おしまいだな・・・。       もう、立ち直れねえよ。(肩を落として、先に歩き出す。) かおる  あっ、待ってよ、ユースケ君(ユースケを追い越して退場。) ユースケ えっ、あの、ちょっと・・・。 ◆ユースケ上手に退場。入れ替わりに、竜、ななこ、上手から登場。 ななこ  ねえ・・。 竜     ん? ななこ  竜となみえって・・・仲いいよね。 竜     ま、ダチだからな。 ななこ  そうじゃなくって・・・お似合いって感じなんだよ。 竜     俺となみえが? ななこ  そ。ほんとは・・・恋人なんじゃないの? 竜     なみえは、ただのダチだよ。そんな風に思ったことはない。 ななこ  そうなんだ・・・。(小声で)よかった。 竜    何か、言ったか? ななこ  えっ、ううん。(話をそらして)あっ、そういえば、どうして竜は、       未来人に協力する気になったの? 竜     ・・・今、俺には大切な家族や信頼できる友達がいる。地球上には       何十億という人間が住んでいて、みんな俺達と同じように大切な仲間と       一緒に、泣いたり笑ったりして暮らしてる。そんなかけがえのない命を       見殺しになんて、できっこないだろ・・・。 ななこ  ・・・。 竜     なんてな。全部、漫画の受け売りだけど・・・。 ななこ  ううん、あたし感動した。 竜     やめてくれよ。 ななこ  惚れ直しちゃった。 竜     は? ななこ  ねえ、竜。手つないでもいい? 竜     (ちょっと、ドギマギしながら)アホか、馬鹿なこと言ってないで       さっさと探すぞ!(下手へ、歩き出す。) ななこ  馬鹿って・・・。 竜     ・・・みんなのいないときだけだぞ。(立ち止まって、後ろに手を差し出す。) ななこ  うん!(走り寄って、手をつなぐ。) ◆二人で、下手に退場。暗転 3場 森・入り口付近 ◆ヒロとなみえが口論しながらでてくる。少し遅れて、真子斗登場。 ヒロ    あーあ、貧乏くじひいちまったよ。ついてねえなあ。 なみえ  それは、こっちのセリフよ! 真子斗  二人とも、もう、やめて下さいよ。 ヒロ    真子斗だって、聞いてただろ。なみえの奴、さっきからから       人のこと馬鹿にしやがって! なみえ  真子斗は関係ないでしょ。女に泣きつくなんて、情けないったら       ありゃしない。そんなんだから、もてないのよ。 ヒロ    傲慢怪力性悪女には、つべこべ言われたくないね。 なみえ  ちょっと、誰が怪力なのよ。 ヒロ    じゃあ、傲慢と性悪は認めるんだな? なみえ  いちいち頭にくるわね、あんた。 ヒロ    何だよ、やるか。傲慢怪力性悪女! なみえ  もう一回いったら、承知しないわよ。 真子斗  いい加減にして下さい! ヒロ    ・・・真子斗? 真子斗  さっきから何なんですか、くだらない喧嘩ばっかりして。       二人とも友達じゃないんですか? なみえ  ともだち?冗談、ヒロとなんて・・・。 真子斗  じゃあ、私の勘違いだったんですね。 ヒロ    えっ? 真子斗  図書室で勉強してたとき、みんな仲良さそうに見えて、憧れてたんです。       私は勉強ばっかりしてて、友達なんていなかったから・・・。でも、       なんかこうしてみてると、けんかばっかりして、相手の事なんて全然考えて       ないみたいで・・・。 なみえ  真子斗、ごめ・・・ 真子斗  一緒に行動したら、私も仲良くなれるかと思ったけど、もううんざりです。       私は・・・一人で探しますから。(上手に退場) ヒロ    あっ・・・。怒らせちゃった。普段おとなしい奴が切れると怖ぇな。 なみえ  大丈夫かな・・・。 ヒロ    何が? なみえ  あたし達と違って、真子斗は森の奥で遊んだ事なんてないじゃない。       今の時期は、雑草が背の高さくらいあって、足下もよくわからないし・・・。 ヒロ    でも、そろそろ時間だ。とりあえず、集合場所へいこうぜ。       真子斗も戻ってるかも知れないし・・・。 ◆なみえ、心配そうに振り返りながら、ヒロともに下手に退場。暗転 4場 駅前 ◆雑踏の音、暫くして照明、中央に、竜、ななこ、ユースケ、かおるの4人。  上手から、なみえ、ヒロ登場。 なみえ  ねえ、真子斗戻ってきた? 竜     一緒じゃなかったのか? ヒロ    怒って、行っちゃったんだよ。喧嘩してたら・・・。 ななこ   ええっ、もしかして、真子斗、森の奥に行っちゃったの? ユースケ やばくない、それって。 かおる   ねえ、真子斗、貞子にさらわれたの? ユースケ いいな、お前。そういう思考回路で。 竜     どうする?日没まで後1時間だぞ。 なみえ  あたし達のせいなんだから、責任取るわ。ヒロ、一緒に来て。 ヒロ    俺で、いいのかよ。 なみえ  昔は、よく喧嘩して、森の中、おっかけっこしたじゃない。 ななこ  機械の方はどうすんの! ヒロ    おまえたちに頼む。四人で探してくれ。 かおる  えっと、わ、私も一緒にいく! ヒロ    これ以上、何かあると困る。真子斗は、なみえと二人で必ず助けるから、       かおるは、みんなと機械を探してくれ。頼りにしてるぞ。 ◆ヒロ、なみえ、上手に退場。 かおる   わーい、ヒロが頼りにしてるって。 ユースケ 竜・・・? 竜     どうした、顔が赤いぞ? ユースケ ヒロ・・・かっこよくなかったか? 竜     熱血気味だったけどな。 ユースケ ・・・ちょっと、ほれたかも。 竜     気持ち悪いこと言うな、このタコ。ななこ、俺達も森に行くぞ。 ななこ   うん。 かおる  あー、なんか二人怪しいー。 ◆竜、ななこ、かおる、上手に退場。 ユースケ  ああ、なんか禁断の愛って感じ・・・って、ちょっと待ってくれよー!      (一人、下手に退場、暗転) 5場 森・崖の下 ◆下手のスポットの中に、横座りの真子斗 真子斗  (強がって)あーあ、やっちゃった。あたしとしたことがあんな事で       熱くなるなんて・・・。おまけに、崖から落ちて、足が動かない。       だって、ぜんぜん見えないんだからしょうがないわよね。それにしても、       なみえさんたち、よくこんなとこで平気で遊んでたわね。(少し、気落ち       した声で)私は、いつも塾で、なみえさんとヒロさんがうらやましかった。       あの二人、いつの間にあんな仲悪くなっちゃったんだろ・・・。(間)       みんな、今どうしてるかなあ。機械探しに夢中で、私のことなんか、気に       してないわよね。あんなに喧嘩ばっかりして、協調性のない人たち       なんて・・・。そうよ、くじ引きの時だって、私のこと忘れてたし・・・。       (間)あたしは、いつもひとりぼっち。こんなことなら、一緒に行動       しなければ良かった。 ◆暗転 6場 森・崖の上 ◆ヒロ、なみえ、上手から登場 なみえ  真子斗ー!聞こえたら返事してー! ヒロ    おーい!真子斗ー! なみえ  だめだ、みつからない・・・。 ヒロ    どこいっちまったのかな・・・。 なみえ  ・・・くたびれた。(座り込む) ヒロ    そういえば、おまえ、今日昼飯ぬいてたな。 なみえ  そうなの、ここんとこ、ちょっとヤバくなってきちゃってさあ・・・。       あれ、あんた、何で知ってんのよ。 ◆ヒロ、無視してポケットから菓子を出す。 ヒロ    これ、食うか。あんまり腹の足しにはならないけど。 なみえ  い、いらないわよ。 ヒロ    そういうと思ったよ。けど、腹が減ってちゃ、真子斗もさがせないぜ。 なみえ  (しぶしぶ受け取りながら)あとで、買って返すからね。 ヒロ    おまえな!そういうところが、かわいげがないんだよ! なみえ  わるかったわね、かわいげがなくて!あんたになんか・・・。       こんなことしてたら、また、真子斗にしかられちゃうね。 ヒロ    そうだな。 ◆なみえ、一口食べる。 ヒロ    もう、時間がない。いこうぜ。(先に歩き出す。) なみえ  ねえ。 ヒロ    ん? なみえ  ありがとう。 ヒロ    (空を見上げながら)こりゃあ、隕石も降ってくるはずだな。 なみえ  (ちょっと、笑って)何よ、ソレ。 ◆下手から、4人が登場。 竜     お、いたいた。 ヒロ    何で、お前らが森にいるんだよ。 ななこ  それは・・・、ほら、機械が森にあるんじゃないかなーと・・・ かおる  えーっ、そうなの。真子斗探しに来たんじゃ・・・ ユースケ 馬鹿、よけいなこというな! なみえ  もう、いいわよ。機械みつかった? ユースケ いや、そっちは? なみえ  全然。 竜     やばいな、あと三〇分だぞ。 ななこ  機械も見つけないと、真子斗みつけても、結局どうしようも       なくなっちゃう。 かおる  あー! ユースケ 何か、見つけたのか? かおる  あのリス、かわいー。 ななこ  こんな時に、ふざけないで! なみえ  ちょっと待って。あのリスのそばに落ちてるの、真子斗のカバン       じゃない。 竜     ほんとだ。(カバンに近づく) ヒロ    気を付けろ、その下崖だぞ! 竜     うわっ! かおる  どうするの、こんな崖降りられないよ。 ヒロ    大丈夫、俺が抜け道知ってる。(上手に退場) なみえ  だから、いっつも、見つからなかったのね!(ヒロの後に続く) ユースケ 何の話だ? 竜     知らない方が身のためさ。俺達も行こうぜ。 ◆4人、上手に退場。暗転 7場 森・崖の下 ◆舞台の照明は消えている。下手のスポットの中に真子斗。 真子斗  誰か、そこにいるんですか。 ◆上手にスポットが当たる。浮かび上がる6人。 なみえ  真子斗? 真子斗  なみえさん? ヒロ    やっと見つけた。こんなとこにいたのか。 ななこ  真子斗、大丈夫? 真子斗  みなさん、どうして・・・。 ユースケ 崖の上でカバン見つけたんだよ。 かおる  一緒に帰ろー。 竜     おい、その足どうしたんだ。 真子斗  何でも・・・何でもないですから。 ヒロ    何でもないわけないだろ。 なみえ  待ってて、今・・・ 真子斗  (大声で)来ないで下さい! かおる  真子斗・・・、どうしたの。 ユースケ 来るなってどういうことだよ。 真子斗  いいから、ほっといて下さい。どうせ、あたしなんか機械探しの       ついでに、見つけただけでしょう。 ななこ  そんな・・・。 竜     お前、ヘンだぞ。 真子斗  別にヘンじゃないです。あなたたちが、私を真剣に探すわけない       じゃないですか。友達でもないのに。どうせ、あたしは優等生で       いつもずけずけものを言って、みんなに嫌われてますよ。いいえ、       あなた達だって、いつも喧嘩ばっかりして、ちっとも仲良くないし、       そんな人たちが、自分たちの命が危ないときに、あたしのことなんか、       気にかけるはずないじゃないですか!同情なんか、まっぴらです。 ◆しばらくの沈黙、 なみえ  真子斗、さっき、あたしたちにあこがれてたっていったよね。 真子斗  そりゃあ、あのときは・・・。 なみえ  あたしもおんなじなの。 真子斗  どういうことですか。 なみえ  (そっとまことに近づきだす。)あたしも、小学校の頃から勉強ができて       自分の思ったことを堂々といえる真子斗にあこがれてたんだ。これでも、       少しでも真子斗に近づきたいと思って、あたしなりに勉強も頑張ってるん       だよ。それに、図書室によく来るのも知ってたから・・・。でも、あたし       なんか、どうせ相手にされないと思ってた・・・。だから、さっきは、       ビックリしたけど、とってもうれしかったよ。(真子斗に手をかける。) ヒロ    なみえ・・・。 なみえ  それに、さっき、真子斗がいなくなってから、またケンカになりかけたんだ。       そしたら、なんか真子斗の悲しそうな顔がうかんできちゃってさ・・・。       あたしも、すこしは、大人になれたかな。 ヒロ    (二人に近づく。)俺には、昔に戻ったように見えるけどな。 真子斗  ごめんなさい・・・。 竜     さてと、後は機械だな。 ユースケ そうだ、忘れてた。 かおる   もう、あと15分だよ。 セイ    (声だけ)それなら、心配いらない。 ◆スポットは消え、照明が点滅、機械音。明るくなると、中央の大きな岩のそばに  セイとトミ。 ななこ  心配いらないって、どういうことよ。 ヒロ    まだ、機械は見つかってないんだぜ。 トミ    これが、その機械です。(岩を指さす。) ユースケ ただの、岩じゃねえか。 セイ    カモフラージュだよ。 トミ    この両側の出っ張りを押すんです。 かおる  わー、おもしろそー。 なみえ  誰かが、間違えて押したらどうなるんだよ。 セイ   ただ、押しただけでは動かない。七人が手をつないで、両端の二人が      同時に押す。しかも、真の友情で結ばれたものの生体エネルギーが      不可欠なんだ。 竜    七人じゃ無いといけないって言うのは、そういうことだったんだ。 ななこ  だったら、何でちゃんと説明しなかったのよ。 トミ    あれは・・・ちょうどカップラーメンをつくっていたものですから。 セイ   そうそう、ちょうど3分経ったのでな。 一同   えーっ! ヒロ   もしかして、機械の在処もしってたんじゃねえのか。 トミ    あっ、ばれちゃいました? かおる  ひどーい、だましたんだー。 ユースケ ふざけんなよ、この野郎!(つかみかかる。) 真子斗  いいんですよ、みなさん。 なみえ  なにがいいのよ、真子斗は怪我までしたのに。 真子斗  わざと・・・なんでしょう? ◆セイ、トミ、横をむいて答えない。 竜    そうか、あのときの俺達じゃ、その何とかエネルギーはでなかったからな。 ヒロ   今なら、大丈夫なのかよ。 ななこ  たぶん・・・。(竜を見る。) ユースケ やってみるしかないんじゃないの? かおる  あたし、ボタン押したい。 真子斗  並ぶ順番は、あるんですか。 トミ    大丈夫です。全員が友達なら。 セイ   さあ、もうあと5分ほどしかない。始めてくれたまえ。 なみえ  じゃあ、みんな並んで。 ヒロ    せーの! ◆機械がうなりをあげる音、暗転。つづいて地鳴り。 8場 図書室 ◆チャイムの音、暫くして照明が付く。配置は、オープニングと同じ。  ユースケ、竜、上手から登場。 竜     勉強終わったか? ユースケ 俺らも部活終わったんだ。一緒に帰ろうぜ。 なみえ  竜、ユースケ。ちょっと聞いてよ。 竜     どうしたんだよ? なみえ  また、あのバカに嫌味いわれた。 ヒロ    痛くも痒くもないんじゃなかったのかー。 なみえ  うるさいなぁ、割り込んでこないでよ。 ユースケ おまえら、またやってんのか? 竜     なみえはなみえ、俺は俺。自分で解決してくれ。 なみえ  何よ、ソレ。 ユースケ けっこう、お互いに気があるんじゃねえの? ヒロ    冗談!誰が、こんな性悪、相手にするかよ。 なみえ  やめてよね、ユースケ。それなら、まだ、竜の方がましよ。 竜     なんで、俺がでてくるんだ。 ななこ   なみえ、竜に手ぇ出したらただじゃおかないからね!ユースケに        しなさい、ユースケに。 ユースケ ダメだね、俺は、ヒロ一筋だもん。 ヒロ    俺は、変態は嫌いだ。 ユースケ えーっ、いいじゃん。恋愛は自由なんだし。 ◆真子斗、上手から登場。 真子斗  自由って言っても、限度があるんですよ。ユースケさん。 ユースケ あれ、真子斗じゃん。 真子斗  お邪魔ですか。 かおる  また、勉強しにきたの? 真子斗  遊びには・・・(にっこり笑って)きちゃいけませんか? なみえ  真子斗、こっちおいでよ。(真子斗、なみえの方へ) かおる  なんか、感じよくなったねー。 ヒロ    学年トップの秀才さんがね。 ななこ  ヒロ、それ真子斗が嫌がるよ。 ヒロ    はいはい 竜     俺らも少し遊んでくか? ユースケ それ、ナイス提案。 ◆がやがやいいながら、幕が下りる。終わり。