予感は的中。主役のＵが体調を崩して医者に行くという。食事も満足に出来ない状態らしい。仕方ない事だが、予定は全てご破算になった。

　学校に到着して事情を説明し、舞台監督のＭに取りあえず代役を頼む。

　「本番もどうなるかわからないから。」
　「えーっ！セリフ覚えてるかなあ。」

　彼女は、諸事情で８月後半の練習に参加できず、そのこともあってキャストを降り、練習も今日復活したばかり。

　「ただ、Ｕが復活できるかどうか微妙だから、無駄になっちゃうかも知れないけど。」
　「いや、Ｕができれば、その方がいいからそれはぜんぜんいいんですけど。」

　中学生ぐらいだと、キャストから外れるとモチベーションを無くしてしまうものも多い。しかし、彼女は今までも家庭の都合以外は全て練習に参加し、その時いないキャストの代役を黙々と(いや、台詞言うから黙々ではないけど)こなしてきた。いい子だなあ。本当に演劇が好きなんだと思う。

　午前中は、一昨日買ってきた布を見せて、パネルの設定と場転の練習を中心に行った。やってみると色々気づく事もあって、足りない布やイメージに合わないものもある。

　昼休みを利用してＭとＡを連れて百円ショップに向かう。Ａは、この背景作りに才能を発揮して、簡単に場転が出来る工夫や場面ごとのイメージのアイデアを沢山出してくれた。特に場転のアイデアは、私も思いつかなかった事もたくさんあった。

　「やっぱ、頭いいねー！」
　「そんなことないです。」

そう言いながらも、素敵な笑顔で嬉しそうに笑っていた。

　午後は、体育館が開いていたので、場転も含めた通し練習を繰り返しやった。Ｍの声は通りが良く、台詞もほとんどはいっている。何とかなりそうだ。