そこで、思いついたのが、師匠のＦ先生作の「ベンチ」だ。一場もので元々公演が舞台だから、ベンチを中央に置いておくだけでいい。準備も片づけもいらないから３０分丸々使える。

　４５分用なので、だいぶ適すとレジしなければならないが、何とかなるだろう。部員達も気に入ったので、Ｆ先生にも許可を貰って、さっそく読み合わせに取りかかった。

　ところが、そろそろ配役を決めようかという時に、難問が持ち上がった。

　実行委員の方から連絡があって、例年会場がかなりうるさい事と、司会とのやり取りやインタビューなどがあり、３０分丸々中身という事でなく、準備５分片づけ５分は見て欲しいとの事。

　どう考えても４５分ものを２０分に縮める事は不可能だ。それと、発足したばかりの部で確かに声は小さい。

　試しに、実際の場所に行ってセリフを言わせてみたが、周りが相当静かでないと通らない。それに、ベンチはニュアンスの細かいセリフが多い。何カ所か聞こえないと話がわからなくなってしまう。

　そこで部員と相談し直し、練習用に読み合わせをしていた「忘れ物」にすることにした。小さい子にも話がわかりやすく、大きい声でセリフを言ってもおかしくない場面が多い。また、上演時間も２０分足らず。条件には上手く合う。

　キャストの割り振りもし直し、校内公演で、飛び入りでキャストを務めてくれたＹと、公演後に手伝いを申し出てくれたＳを含めて、８人で再スタートした。